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◆2017 ヨーロッパ認知行動療法学会(EABCT)スロベニア   
2017年9月 丹野義彦

 2017年9月にスロベニアのリュブリャナで開かれたヨーロッパ認知行動療法学会(EABCT2017)に参加した。

1.どんな学会が、いつ、どこで開かれるか。
ヨーロッパ認知行動療法学会  European Association of Behavior and Cognitive Therapies (EABCT)
日時:2017年9月13日~9月16日
場所:リュブリャナ(スロベニア) The GR - Ljubljana Exhibition and Convention Centre

トルコのテロ事件により会場の変更
 2017年EABCTは、はじめトルコのイスタンブールで開かれる予定であった。
 ところが、イラク戦争のため、難民がトルコに押しよせて治安が悪化し、2016年6月にはイスタンブール空港で爆弾テロがあり、48人が死亡した。この事件により、2017年のイスタンブール開催をあきらめた。
 2017年1月25日に、Relocationのメールが会員に届いた。EABCTの会場がスロベニアのリュブリャナに変更されたというのである。大会長のメールには、「この時期になって会場を変えるのは、感情的にも財政的にも困難な決断だった」と書いてあった。財政的な困難(会場のキャンセル料とか、新たな会場費の発生とか、知らない国での大会運営とか)は大いに予想される。感情的な困難については、開会式での大会長のあいさつに、その悔しさがにじんでいた。こうした会場変更は、EABCT本部の指令だったかもしれない。
 このような会場変更は稀なことである。
 確かに、アジアで開かれる学会では、政情不安が大きな影響を与えることがある。例えば、2008年10月にタイで開かれた第2回アジア認知行動療法学会では、赤シャツと黄シャツと呼ばれる反政府デモがバンコクでおこり、参加者の多くが出席をキャンセルした。2014年に香港で開かれた国際認知療法会議の直後には、香港で大きな反政府デモがおこった(学生が雨傘をかかげて抵抗したため「雨傘革命」と呼ばれたのは記憶に新しい)。2018年にバングラデシュのダッカで開かれる第6回アジア認知行動療法でも、2016年に日本人が多く犠牲となったダッカレストラン襲撃事件の影響が心配される。
 しかし、ヨーロッパ認知行動療法学会では、こうした政情不安が学術大会に影響するのは初めてのことである。世界の治安がしだいに悪くなっていることを実感する出来事だった。


2.どんな領域の研究者が参加するか、どんな雰囲気の学会か。
 ヨーロッパ行動認知療法学会EABCTは、ヨーロッパの38カ国から52の学会が加盟する傘団体である(2013年現在)。1976年にヨーロッパ行動療法学会(EABT)として創立され、1992年に、認知療法が加わって、ヨーロッパ行動認知療法学会(EABCT)と改称した。現在、加盟者数は25,000名に達する。

トルコの認知行動療法の学会
 開催地のトルコ認知行動療法学会(Turkish Association of Cognitive and Behaviour Psychotherapy;TACBP)は、1995年にマルマラ大学病院精神科教授のメフメット・スングールMehmet Sungur らを中心に創設された。スングールは、イギリスで精神科の訓練を受け、ロンドン大学のアイザック・マークスといっしょに仕事をした。スングールがこの大会の大会長を務めていた。
 また、トルコ認知行動療法学会の代表は、トルコのウルダー大学教授ユースフ・シブリオグリュYusuf Sivrioğluである。彼はこの大会の組織委員長をつとめていた。
 大会テーマは、普及と良い実践の橋渡しbridging dissemination with good practicである。

スロベニアの認知行動療法学会
 スロベニア認知行動療法学会は1997年に創設され、会員数は174人とのこと。しかし、この大会はトルコで準備されたものなので、大会の運営は会長スングールが運営会社を使って行い、スロベニア認知行動療法学会は大会運営には参加していない。


3.学会の規模はどれくらいか。 何人くらい参加するか。
 だいたい500名ほどの参加があった。
 学術プログラムは、ワークショップ55本(前日16本、大会中39本)、基調講演は30本、シンポジウムは39本、口頭発表16本、ポスター発表80本であった。
 例年よりプログラム数は多く、認知行動療法のスキルの普及に力を入れていることがわかる。ふつうはワークショップは有料であるが、中には無料のワークショップもあった。


4.どんなプログラムがあるか。

(1)開会式
 開会式は9月13日18:30から、マルモルナホールで開かれた。
①大会長のメフメット・スングール(Mehmet Sungur 、トルコのマルマラ大学病院精神科教授で、トルコ認知行動療法学会の会長)のあいさつ。
 前述のように、この大会はイスタンブールで行なうはずだったが、イラク戦争のため、難民がトルコに押しよせて治安が悪化し、2016年6月にイスタンブール空港で爆弾テロがあり、48人が死亡した。この事件により、急遽スロベニアへと変更した。
 開会式では、このテロ事件の犠牲者への黙とうを行なった。トルコで準備された大会なので、大会の運営は会長スングールが運営会社を使って行ったようだ。スロベニアの人がこの大会に関与しているわけではない。
②EABCTの会長ギリシャのカルパコグロウThomas Kalpakoglouのあいさつ。
 safeということを重要視したという。こうした講演内容からみて、会場変更はEABCT本部からの指示だったのかもしれず、大会長が悔しさをにじませていたのはこのことだったかもしれないと感じた。2018年大会はブルガリアのソフィア、2019年大会はドイツのベルリン、2020年大会はギリシャのアテネと発表された。
③組織委員長のユースフ・シブリオグリュ(Yusuf Sivrioğlu、トルコのウルダー大学教授、トルコ認知行動療法学会の代表)のあいさつ。
④ジュディス・ベックが出て、アーロン・ベックからのメッセージを読んだ。いつもはビデオレターなどでベック自身が登場するが、今回は簡単なメッセージだけだった。
⑤大会長スングールの講演
 まじめな講演であり、認知行動療法を外から見て、今後の発展について辛口のコメントであった。イギリスのIAPTがこの学会の共通財産だが、この人は少し外から見ている。
⑥アトラクション
 女性のフルート奏者Şefika Kutluerと男性の画家Ertuğrul Ateşというアーチストが登場し、フルートにあわせて即興で絵を描くというパフォーマンスであった。2人ともトルコ人で、あえてここに呼んできたという。政治的事情でトルコ開催はできなかったが、せめてアトラクションはトルコ人によるものをしたいという大会長の望みだったようだ。「2人のパフォーマンスはトルコが誇るものだ」と、大会長は言っていた。
 フルート演奏は美しかった。後半はバッハの有名な曲を続けて吹いたり、ジャズ風の曲とかで楽しめた。1時間くらいかけて、ずうっと描いていた。即興といってももともとのイメージはあったようだし、フルートの曲と合っているわけでもない。長すぎたが、会場を立つ人がいなかったのは、フルートがよかったからだろう。完成した絵は、会場に飾られているかもしれないと思ったが、飾られていなかった。前回のストックホルム大会に続いて、印象に残るアトラクションにはなった。
⑦レセプション
 屋外での立ち食いで、寒かった。人数が多すぎて、食べ物になかなかありつけなかった。ワインは飲み放題だった。

(2)印象に残ったプログラム
①クリニカル・ラウンドテーブル

 「診断横断的方法Trans-Diagnostic Dysfunction」についての臨床ラウンドテーブルがあった。大会長のメフメット・スングールが司会をした。もともと心理療法は対象の診断を気にしなかったが、認知行動療法は、対象を診断別に細かく分けてそれぞれに特化した方法を用いる。こうした対象特化的アプローチは、医学では当然のことだし、アメリカのベックやイギリスのIAPTでも成功した方法である。しかし、その行きすぎから批判も出ている。DSM-5においても、内在化・外在化障害群にまとめる動きや、パーソナリティ障害のビッグ5の利用などに、診断横断的な話も出てきたし、NIMHの研究領域基準(Research Domain Criteria, RDoC)でもDSM-5のような細かい診断の妥当性に疑義がもたらされた。このため、以前から診断横断的アプローチが注目されていた。アメリカの認知行動療法家のデイビッド・バーロウも診断横断的アプローチを作った。
 企画のスングールは、精神科医ではあるが、対象特化的アプローチに批判的であり、診断横断的アプローチを進める。(次に述べるヘイズも診断横断的アプローチを取るが、ヘイズの司会もスングールがしていた。)
 また、バーロウの弟子のステファン・ホフマンもでてきて、この話をしていた。
 さらに、イギリスのエイドリアン・ウェルズも、メタ認知療法などは、診断横断的であると主張した。
(以下は私見だが、これまではロジャースのような診断を無視した態度や反科学的態度が強かったこれまでの心理療法業界に対して、せっかく認知行動療法が対象特化アプローチを持ち込んで、古い体制から脱したのに、またそこに戻るのは、退歩のように思えて残念である。)

②スティーブン・ヘイズのキーノート講演
 ネヴァダ大学のスティーヴン・ヘイズのキーノート講演The Pervasive Importance of Psychological Flexibility in Process Oriented Evidence-Based Practiceがあった。彼はACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の開発者として知られる。本大会のキーノート講演の第1番であり、大会長のスングールが直々に司会をしており、彼の思い入れも強いようだ。
 講演の最初では、DSMの時代は変わりつつあるとして、診断横断的アプローチやRDoCの話を引き合いに出した。続いて、進化論の話を出したが、これについてはデータのない話だったので、英語の力不足もあり、よく理解できなかった。最後は効果研究からACTは何にでも効くことを宣伝していた。
(ヘイズの講演はたいへん刺激的で面白く、本大会で一番の収穫だったかもしれない。しかし、私の英語の力不足もあり、よく理解できない部分も多かった。私は2009年の日本心理学会でのヘイズの来日講演を聞いたが、彼はどこかカリスマ的で、有無を言わせぬトップダウン型の講演スタイルで、もう少しわかりやすく説明してほしいと感じた。ACTの治療効果が実証されているのはわかるが、ACTの治療メカニズムは、何回聞いても理解できない。また、これまでは反科学的態度が強かったこれまでの心理療法業界に対して、せっかく認知行動療法が科学的アプローチを持ち込んで、古い体制から脱したのに、ACTやマインドフルネスのような第3の波は、また古い体制に戻ってしまう危険もあるかもしれない。)


③エーラーズのキーノート講演とサルコフスキスのキャラクター
 オクスフォード大学のアンケ・エーラーズのキーノート講演Treating posttraumatic stress disorder effectively and efficiently: A cognitive approachも面白かった。サルコフスキスが司会と書いてあったが、サルコフスキスは不在で、エーラーズが自分で講演を始めた。
 PTSDに対する認知行動療法はずいぶん進歩している。自伝的記憶のアップデート手法やトリガーの弁別などの方法も取り入れられ、これにより睡眠時間が増える効果があるという。派手な理論展開はないが、効果を高めるために地味にいろいろな方法を確かめている。効果量もしだいに高くなっている。地をはうような技法の蓄積で、上のヘイズの講演と好対照である。
 講演が終ったら、何と司会のサルコフスキスがやってきた。壇に上がると「講演はこれで終わり」と宣言して、会場は大笑いだった。サルコフスキスは、おっちょこちょいの不器用キャラクターで、いつの学会でもいろいろなエピソードを残している。例えば、2001年のバンクーバーWCBCTでは、シンポジウム中に氷の入った容器をひっくり返して、会場中が大笑いになった。2004年の神戸WCBCTにおいては、ガラディナーでテーブルの上でグラスの水をひっくりかえして、大騒ぎとなった。
 あとで、研究室の星野君のポスター発表の会場にサルコフスキスが来たので、なぜ遅刻したのかと聞いてみたら、「講演の座長であることを知らなかった」とのこと。20分くらい前にエーラーズと会ってあいさつして別れたのに、彼女も言ってくれなかったとのこと。とはいえ、座長の連絡がないことはあり得ないので、連絡が来ていても忘れていたのだろう。
 エーラーズとサルコフスキスは、クラークとともにロンドン大学精神医学研究所(モーズレイ病院)の仲間である(3人がいた2002年に、私も精神医学研究所に滞在していた)。現在はクラークとエーラーズはオクスフォード大学に行き、サルコフスキスはバース大学に行った。
 そのロンドン大学精神医学研究所(モーズレイ病院)の不安障害トラウマ研究センターを引きついでいるのが、デイヴィッド・ヴィールDavid Vealeであり、この大会ではvomiting恐怖症への認知行動療法の講演をしていた。


5.有名な研究者でどんな人が参加するか。
 初日は、以下の16本のワークショップが開かれた。ヨーロッパやアメリカの第一線の認知行動療法家である。これらの講師は、ほとんど招待講演をおこなっていた。
サルコフスキスPaul Salkovskis  Hoarding: a question of value.
ウェルズAdrian Wells  Core principles and techniques for good practice of Metacognitive Therapy.
エーラーズAnke Ehlers  Cognitive Therapy for posttraumatic stress disorder.
ターキングトンDouglas Turkington  CBT for dissociation and hallucination in psychosis.
ジュディス・ベックJudith Beck  A Cognitive Behavioral Approach to Weight Loss and Maintenance.
リーヒーRobert Leahy  The Therapeutic Relationship in CBT and management of Transference- Countertransference issues.
ヘイズSteven Hayes  Acceptance and Commitment Therapy.
ドブソンKeith S. Dobson  Cognitive behavioral therapy for depression.
ホフマンStefan Hofmann  Treating Anxiety Disorders.
ランダムスキーAdam S. Radomsky  Cognitive Therapy for OCD.
パパジョージウCostas Papageorgiou  Metacognitive therapy for depression in individual and group formats.
ベネット・レヴィJames Bennett-Levy  Experiencing strengths-based CBT from the inside out.
フリードバークRobert Friedberg  CBT with Young Patients and Families: Useful Measures and Methods.
アーンツArnoud Arntz  Schema Therapy for borderline personality disorder.
ニューマンCory Newman  Preventing Suicide: Using CBT to Help Clients Choose to Live.
ライアンFrank Ryan  The willpower workshop: innovative CBT applied to addiction.


6.日本から誰が参加していたか。
 日本からの演題の発表は、17題であった。プログラムには発表者の国名は書かれていないのでよくわからないが、日本からの発表は多い方である。
 千葉大学の清水栄司先生のグループ、大阪大学の佐々木淳先生のグループ、上智大学の毛利伊吹先生たちしといっしょになった。日本人の参加は約30名だろう。

●丹野研究室からの発表は以下の2件である。
Nishiguchi, Y. Imaizumi, S. & Tanno, Y.
ALEXITHYMIC TRAIT INTERACTS WITH THE EFFECT OF BODILY ACTION ON EMOTIONAL ATTENTION.
European Association for Behavior and Cognitive Therapies Annual Congress, Ljubljana, 2017.

Hoshino, S. & Tanno, Y.
INDIVIDUAL DIFFERENCES IN PERCEPTUAL DECISION-MAKING : DIFFUSION MODEL ANALYSES
European Association for Behavior and Cognitive Therapies Annual Congress, Ljubljana, 2017.


7.発表申し込みの〆切はいつか、大会参加費はいくらか。
 ポスター発表などのアブストラクトの〆切は 2017年5月19日である。
 当日参加費は、会員が700ユーロ、非会員が725ユーロ、学生会員が450ユーロである。事前登録すると、それぞれ600ユーロ、495ユーロ、350ユーロとなる。


8.これまでの開催地と次回の開催地はどこか。
 EABCTについては、2002年のマーストリヒト大会から初めて参加して以来、8回目の参加となる(2006年のパリ大会、2007年のバルセロナ大会、2008年のヘルシンキ大会、2013年のマラケシュ大会、2016年のストックホルム大会、2017年のリュブリャナ大会)。毎回、ヨーロッパの知人と再会できるのはうれしいことである。
 この学会の最近の開催地は以下の通りである。
2001年 トルコのイスタンブール
2002年 オランダのマーストリヒト
2003年 チェコのプラハ 
2004年 イギリスのマンチェスター(BABCPとの共同開催)
2005年 ギリシアのテッサロニキ
2006年 フランスのパリ
2007年 スペインのバルセロナ(WCBCTと共同開催)
2008年 フィンランドのヘルシンキ(2008年9月10-13日)
2009年 クロアチアのドゥブロヴニク(2009年9月16-19日)
2010年 イタリアのミラノ(2010年10月7-10日)
2011年 アイスランドのレイキャビク (2011年8月31日-9月3日)
2012年 スイスのジュネーブ (2012年8月29日-9月1日)
2013年 モロッコのマラケシュ (2013年9月25日-28日)
2014年 オランダのハーグ(2014年9月10日-13日)
2015年 イスラエルのエルサレム(2015年8月31~9月3日)
2016年 スウェーデンのストックホルム (2016年8月31~9月3日)
2017年 スロベニアのリュブリャナ(トルコのイスタンブール変更) (2017年9月13~16日)
2018年 ブルガリアのソフィア (2018年9月5~8日)
2019年 ドイツのベルリン(WCBCTと共同開催)
2020年 ギリシャのアテネ
 日本人の参加者は、丹野の知る限りでいうと、マーストリヒト大会(2002年)では3名,プラハ大会(2003年)では10名、マンチェスター大会(2004年)では15名、テッサロニキ大会(2005年)では12名(うち丹野研から8名参加)、パリ大会(2006年)では7名、バルセロナ大会(2007年)では150名、ヘルシンキ大会(2008年)では11名、マラケシュ大会(2013年)では10名、ストックホルム大会(2016年)は30名である。エルサレム大会(2015年)では、治安の関係で参加できなかったのは心残りである。ストックホルム大会(2016年)は約30名、リュブリャナ大会(2017年)は約30名である。


9.学会や大学や旅行で気がついたこと、その他

 スロベニアの広さは、日本の四国と同じで、人口は200万人である。首都のリュブリャナは人口32万人の小さな都市である。スロベニアという国は、もと東欧共産圏に属し、日本人にはあまりなじみがないが、地図で見ると、イタリアの東隣にあり、西欧に最も近い国といってよい。
 Sloveniaは、国名の中に"Love"という字が入っている世界ただひとつの国である。
 しかし、歴史的にみると、東西ヨーロッパの境界として政治に巻き込まれ、とても「loveの国」とは呼べない不幸な歴史をたどった。オーストリア・ハンガリー時代に発展し、第一次大戦後にはユーゴスラビアに組み込まれた。第二次大戦中はナチスドイツの侵入を受けたが、ソ連軍によって解放され、戦後は、チトー率いるユーゴスラビア社会主義連邦共和国の一部となった。この頃、トリエステ周辺を巡ってイタリアと国境紛争をおこした。スロベニアは、ゴリツァという街の真ん中に壁を作り街を分断したため、「第2のベルリンの壁」と呼ばれた。
 1989年の共産圏解体により、スロベニアは1991年にユーゴスラビアからの独立を宣言した。一時はユーゴスラビアから武力攻撃を受けたが、10日間だけでそれも収まり、独立が確定した(しかし、ユーゴスラビアの解体によって、バルカン半島で民族紛争が起こったことも記憶に新しい)。2004年には、旧共産圏では最初にEU加盟を果たした。2007年にはユーロ通貨圏に入った。
 ユーロ圏なので旅行には便利である。これといった名物がある国ではないのだが、リュブリャナでは、日本人やアジアからの観光客が多かったのは意外であった。イタリアの隣りでありながら、古き良き東ヨーロッパの雰囲気を感じられ、治安もかなり良いところがこの国の観光資源なのかもしれない。

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