参考 バルセロナWCBCT2007 参加報告記
2007世界行動療法認知療法会議(WCBCT)バルセロナ
丹野義彦(東京大学総合文化研究科)
2007年8月13日
2007年7月にバルセロナで開かれた世界行動療法認知療法会議(WCBCT2007)は、世界から4000人が参加し、大成功に終わった。日本からは150人近くが参加した。これほど多くの日本人が参加する海外の学会は珍しい。丹野研からも10名が参加して盛り上げた。
WCBCTは、実証にもとづく臨床(エビデンス・ベーストなプラクティス)ということが基本理念になっている。
シンポジウムやワークショップは、領域別に、19のテーマに分けられていた。すなわち、うつ病、不安障害、精神病、子どもと思春期、基礎的プロセス、嗜癖行動、応用行動分析、行動医学、人格障害、通分化的問題、摂食障害、知的障害、トラウマ、性的・結婚・家族、治療上の問題、訓練とスーパービジョンであった。
今回の大会は、同時に22会場が併列しておこなわれるという巨大さであった。時間割では、これら19テーマが色分けで示されていたので、領域を選んで聞くことは容易であった。丹野はおもに精神病のテーマを中心に聞いて回った。
今大会は、英語とスペイン語の2つが公式言語であった。英語とスペイン語は、同時通訳が入っていた。ワークショップなどは、スペイン語でおこなわれるものも多かった。
ワークショップやシンポジウムのプログラムを見ると、スペインからの発表者も多い。スペイン語がわからないので、大学名などは推測になる。
地元のバルセロナからの発表者も多い。
特に多いのは、バルセロナ自律大学(The Universitat Autònoma de Barcelona's)医学部である。ここからは数十の発表が出ていた。
他には、ホスピタル・クリニク(バルセロナ大学医学部臨床病院)が多い。
バルセロナの病院からは、デルマル病院(Hospital del Mar、文字通り訳すと「海の病院」となるが、バルセロナ市立病院ということである)、モレット病院、マタロ病院などからの発表があった。おそらく精神科からの発表と思われる。
バルセロナ以外では、グラナダ大学、サラマンカ大学、マラガ大学、バレンシア大学、マドリード自律大学からの発表が多かった。スペインでも、認知行動療法は多くの病院に普及していると思われる。
この大会には、世界から4000人が参加した。前回の2004年神戸大会の参加者は1400名だったので、3倍近くに増えたことになる。この学会は急速に成長している。
参加者の内訳は、オーストラリアが350名、北アメリカが300名、東アジアが250名ということであった。このように、世界中から参加している。認知行動療法が世界的に定着しつつあることを示している。日本も例外ではなく、日本からは150人近くが参加した。これだけ多くの日本人が大挙して参加する海外の学会は珍しい。
いずれのプログラムにおいても、今回のバルセロナ大会は、前2回を上回っており、大規模化している。
今回の大会と、過去4回の大会のプログラムを比較してみよう。
丹野は主にPsychosisのプログラムに出て勉強した。モリソンのシンポジウム、ウェルズのシンポジウム、ベンタルの講演、ジュディス・ベックの講演、ウェルズのシンポジウム、クレア・リーダースの出たシンポジウム、ガレティの講演、ウェルズの講演、ヤングの講演を聞いた。
丹野はシンポジウムを企画した。タイトルは、"Cognitive behavioral approach to the psychology on symptoms of psychosis"というものである。このシンポジウムは、3年間という時間をかけた企画であった。
2001年のWCBCTバンクーバー大会で、「2004WCBCT神戸大会で丹野研からシンポジウムを出そう」と決意し、神戸大会では、数本のシンポジウムを出すことができた。そこで、バルセロナでもぜひシンポジウムを開きたいと思い、丹野研のホームページで宣言していた。
今回のバルセロナ大会では、丹野研関係で、2本のシンポジウムを企画して応募した。アクセプトされたのは1本である。
あとで聞くと、300本以上のシンポジウム企画の応募があり、その企画を科学委員会で選考し、182本に絞られたという。採択率は60%という狭き門であった。
国際学会のシンポジウムの企画は、日本人にはなかなか難しい課題である。外国人にシンポジストを依頼しても、この大会に参加しなかったりして、なかなか難しかった。
シンポジウムは、大会最終日の午後におこなわれた。85分という比較的短い時間であったが、きちんとしたシンポジウムができたと思う。
Symposium 180
CCIB Room 128
Cognitive Behavioral Approach to the Psychology on Symptoms of Psychosis
Convenor: Yoshihiko Tanno, The University of Tokyo, Japan
Chair: Takuma Ishigaki, The University of Tokyo, Japan
Discussants: Phillipa Garety, Institute of Psychiatry, UK
Jun Sasaki, The University Of Tokyo, Japan
15.30 Delusion-Like Ideation and Coping: Avoidant Vs. Planning Problem-Solving Coping Strategy
Syudo Yamasaki, University of Tokyo Hospital, Japan
15.45 Conditions for Emergence of JTC Reasoning Bias Among Japanese College Students with Delusional Ideation
Hiromi Arakawa, University of Tokyo, Japan
16.00 The Effects of Self-Relevant Material on Reality Monitoring in Hallucination-Prone Subjects
Eriko Sugimori, University of Tokyo, Japan
16.15 Highly Schizotypal Students have Weaker Sense of Self-Agency
Tomohisa Asai, University of Tokyo, Japan
16.30 The Structure of Situations that Induce Paranoid Thoughts in a Non-Clinical Population
Takashi Yamauchi, University of Tokyo, Japan
このシンポジウムが開かれたのは大会最終日の午後かつ土曜日であったため、多くの参加者はすでに家路についていたりしたのか、聴衆はそれほど多くなかった。しかし、この分野では有名なダニエル・フリーマン(ロンドン大学精神医学研究所講師、ガレティ研究室)が来て、感想を述べていた。
3年間という長い時間をかけ、バルセロナ大会の最大目標でもあるシンポジウムを完了し、充実感がある。
次回の2010年ボストン大会でも、ぜひ丹野研から2本以上のシンポジウムを企画したい。
本大会では、合計86本のワークショップが開かれた。この数は、これまでの認知行動療法関係の学会では、最大のものであろう。これほど多数のワークショップを同時に開いた大会は見たことがない。
一日ワークショップへの参加料は160ユーロである。最近はユーロが高くなり、1ユーロ170円に達しているので、日本円にすると27000円であり、決して安くはない。しかし、それに見合うだけの内容はある。世界的に著名な臨床家のワークショップが多かった。クラーク、サルコフスキス、ウィリアムズ、ウェルズをはじめ、イギリスの主だった認知行動療法のリーダーはみんな来ていた。アメリカの臨床家も有名な人が来ていた。
大会前日の一日ワークショップは、以下の26本である。
このうち、ウィリアムズ(オクスフォード大学)の「うつ病に対するマインドフルネス療法」は、日本人も5名出ていたということである。このワークショップに出ていた伊藤義徳先生(琉球大学准教授)によると、ウィリアムズは、ティーズデイル(元ケンブリッジ大学)の一番弟子とのこと。早稲田大学の越川房子先生が、ウィリアムズのもとに留学していたということである。2002年にシーゲルやティーズデイルとともに、『うつ病に対するマインドフルネス認知療法』を出版し、世界中にマインドフルネス認知療法が普及するきっかけとなった(Segal, Z.V., Williams, J.M.G., and Teasdale, J.D. 2002 Mindfulness-based Cognitive Therapy for Depression: a new approach to preventing relapse. New York, Guilford Press.)。ウィリアムズについては、昨年来日したクラークも褒めていた。誰か日本に招待する人を推薦してもらえないかと聞いたら、クラークはウィリアムズを推薦していた。ぜひ、日本にも呼びたいものである。
また、伊藤義徳先生は、日本でマインドフルネス認知療法の実践と指導をしており、現在、これについての著書も準備中とのこと。さっそく、東京認知行動療法アカデミーにおいて、10月7日に「マインドフルネストレーニングの科学と実践」と題したワークショップを開いていただくことになった。
招待講演をおこなった著名な参加者は以下の通りである。
今年の9月の日本心理学会第71回大会(東洋大学、大会会長は安藤清志先生)に、イギリスのエイドリアン・ウェルズが招待されている。バルセロナのWCBCTにウェルズも来ていたので、丹野は来日について打ち合わせをした。
これまで、丹野は、何度かウェルズに来日をお願いしていたのだが、実現しなかった。今回、日本心理学会の招待で、ようやく来日が実現した。2006年にパリで開かれたヨーロッパ認知行動療法学会(EABCT)において、丹野はウェルズに来日を依頼し、承諾の返事を得たのである。
ウェルズは、日本心理学会において、以下の講演とシンポジウムをおこなう予定である。
また、大会会長の安藤清志先生のご好意で、東京認知行動療法アカデミーでのワークショップが実現したこともありがたい。
今回のウェルズの講演とワークショップは、日本の臨床心理学や精神医学にとって、非常に大きな意義を持つことになる。この来日を成功させるために、ウェルズとの綿密な打ち合わせが必要である。この仕事も、今回の丹野のWCBCT参加の大きな目標のひとつであった。
今回の大会では、ウェルズは、世界の認知行動療法のリーダーとして活躍していた。
会期中の4日間のほとんどすべてのコマに、ウェルズは出演していた。初日には、全日ワークショップ『不安・トラウマ・抑うつへのメタ認知療法』を開いた。
2~4日目には、5つのシンポジウム、2つのパネル・ディスカッション、招待講演など、朝から晩まで、10個のプログラムに出ていた。
最終日の招待講演は、『メタ認知療法:いろいろな障害に対する治療メカニズムと治療効果』と題した講演であった。非常に明快な内容であり、また臨床的な内容も豊富であった。500人収容の大ホールが満員となっていた。同じホールで開かれたジュディス・ベックの講演と同じような人気であった。ここからも、ウェルズが、世界の認知行動療法のリーダーとして期待されていることが実感された。現在イギリスの臨床心理学のリーダーとして活躍しているデイビッド・クラーク、ポール・サルコフスキス、アンケ・エーラーズなどの後を継いで、ウェルズは、将来のイギリスの臨床心理学を牽引することになるだろうと実感できた。
ウェルズは、これまで多くの国際学会でのワークショップを開いている。丹野が知る限りでも、2001年世界行動療法認知療法会議(WCBCT)バンクーバー大会、2004年ヨーロッパ認知行動療法学会(EABCT)マンチェスター大会、2006年ヨーロッパ認知行動療法学会(EABCT)パリ大会でワークショップを出してきた。丹野は、2001年のWCBCTバンクーバー大会において、初めてウェルズのワークショップを聞いた。非常に明快でわかりやすく、大きな感銘を受けた。しかし、ひとつ大きな失敗をした。この日バンクーバーに着いたばかりで、時差ボケがひどく,英語を聞きながらつい居眠りをしてしまった。急にガヤガヤしたので何事かと思ったら,ロールプレイが始まっていた。周りの人はすべてペアを組んでいたので,孤立してしまい,しかも周りは日本語が通じないという状況である。狭い部屋で、外に抜け出すこともできず、強い焦燥感を感じた。この失敗については、拙著『認知行動療法ワークショップ2(金子書房)』にまとめた。
今回、バルセロナでウェルズのシンポジウムや講演を続けて聴いてわかったことがある。ウェルズの話は、わかりやすく明快で、快い。また、ウェルズの声は非常に良く、流れるような感じである。だから、意外に眠くなってしまうのである。バルセロナでも、時差ボケがひどく,英語を聞きながらつい居眠りをしてしまった。バンクーバー大会での体験は必然的だったのかもしれない。
ウェルズは、最近2冊の共著を出版した。会場の展示場で手に入れた。新しい本を手に入れられるのも、国際学会の楽しみのひとつである。
Papageorgiou, C. & Wells, A. 2003 Depressive Rumination: Nature, Theory and Treatment. Wiley.
『抑うつ的反すう:実態、理論、治療』
Davey, G. & Wells, A. 2006 Worry and its Psychological Disorders: Theory, Assessment and Treatment. Wiley.
『心配と心理学的障害: 理論、アセスメント、治療』
この大会では、日本人が多く参加していた。気がついたことをまとめよう。
この大会では、日本人が多く関与している。
科学委員会に松見淳子先生、国際アドバイソリー委員会に坂野雄二先生、国際アドバイソリー組織委員会に原井宏明先生が参加している。
今回は、若い大学院生がかなり参加していることが特徴である。これまで国際学会というと、中堅のリピーターが参加していることが多かった。ところが、今回は、そうした中堅のリピーターに加えて、大学院生が研究室ぐるみで大挙して参加していた。これまでこの学会に何回も参加した中堅が、自分の研究室の若手を引きつれて参加していた。中堅教員が院生をきちんと育てるようになった。昔のように院生をほったらかしにしないで、どんどん研究を指導している。
大学院生が国際学会で英語で発表するのは当り前という雰囲気になったのはうれしい。国際学会に参加するのは、若ければ若いほど刺激があるので、これはたいへん望ましいことだと言えよう。
2001年のバンクーバーでは、坂野先生、松見先生、丹野といった第1世代が中心であった。
2004年の神戸大会では、第1世代の研究室から育った第2世代の研究者が中心であった。坂野研究室の神村先生、嶋田先生、鈴木先生、福井先生、丹野研の石垣先生、毛利先生、杉浦先生といった方々である。
今回の2007年のバルセロナ大会では、第2世代がそれぞれ研究室を開いて、大学院生を育て、その大学院生が多く参加していた。つまり、第3世代が現れているわけである。バルセロナ大会の成功は、この第3世代のパワーによる。彼らは、神戸大会を知らない。今年の博士1年生は、2004年の神戸大会では、まだ大学院生ではなかった。早くも「神戸を知らない世代」が現れている。次回のボストン大会では、これら第3世代が中心となるだろう。あるいは、第4世代「バルセロナを知らない世代」がボストンを盛り上げることになるかもしれない。
大学院生が多く参加できた原因として、「WCBCT2004記念若手研究奨励基金」の経済的後押しがある。
2004年のWCBCT神戸大会を開くために、日本行動療法学会,日本行動分析学会、日本認知療法学会の主催3学会は、多くの大会資金を集めた。学術会議や学術振興会に申請したり、県や市などの寄付を求めたり、企業からの協力を求めた。丹野も2003年の暮れに、多くの企業を回って、資金集めをした。また、ひとりでも大会参加者が多くなるように、いろいろなところでWCBCTの宣伝をした。大会資金が赤字になると、学会の持ち出しとなる。そうならないように、非常に努力したのである。
ふたを開いてみると、幸い、寄付金も多く集まり、大会参加者も多かったため、大会運営は楽になり、大会後には、少しの剰余金が出た。これをどのように使用するか、主催3学会は協議した。神戸大会の成果を書籍として出版するという案も出たが、これから3学会を背負って立つ若い世代に対して、WCBCT参加の支援をするべきだという結論になった。
そこで、「WCBCT2004記念若手研究奨励基金」を発足させ、WCBCT2004の財務委員長丹羽真一先生が管理することになった。この基金の目的は、わが国における行動療法・認知療法・認知行動療法の一層の発展に資するために、WCBCT2007およびWCBCT2010で発表する若手研究者を助成することである。3学会のいずれかに所属している研究者を対象として、10万円が支給された。助成対象者はWCBCT2007の終了後1ヶ月以内に1200字の発表報告書を各所属学会へ提出することを求められる。
今回、3学会によって選考委員会が設けられ、選考がおこなわれた。選考委員は、日本行動療法学会から、松見淳子先生、中川彰子先生、原井宏明先生、日本行動分析学会から、杉山尚子先生、井上雅彦先生、島宗理先生、日本認知療法学会から丹野が参加した。
申請の〆切2007年2月末日において、42名の応募があった。選考の結果、24名が助成を受けることになった。選考結果は各学会ホームページ上に掲載された。後で辞退者が出た場合を考慮し、次点助成対象者を決定したが、実際には、辞退者はなかった。すなわち助成者すべては大会で発表した。
丹野は、その選考委員として、世話役的な役割をした。42名の申請者からの申請用紙をまとめて、選考委員に送ったり、申請者リストを作成して、書類を点検したりした。また、選考後は、助成者に連絡したり、送金の準備をしたりした。大会後も、助成者からの報告書をまとめたりする仕事をすることになっている。これらは結構たいへんな作業量になるし、間違いがあっては困るので、気を遣う作業である。
こうした基金も、若手が多く参加する後押しをした。その意味では、神戸大会のために企業を回って寄付集めをしたことも、今生きてきた。苦労したこともそれなりに報われている。神戸大会はここでも大きな意義を持っているのである。
これまで、これほど大規模な国際学会の若手支援は少ないのではないだろうか。以前に、日本心理学会が、「ヤングサイコロジスト」事業として、国際心理学会に奨学派遣をしたことがある。10名の若手に旅費を出した。丹野も1984年のICPアカプルコ大会で助成を受け、ヤングサイコロジストとして参加して、大きく刺激された。国際学会への若手支援は、非常に大きな効果があるのである。丹野はこのような支援機構を個人的に作っても良いとさえ思っている。
ほかに、日本心理臨床学会も海外での学会参加に支援を出している。また、日本行動分析学会は、毎年のアメリカ行動分析学会への参加の支援をしている。しかし、それほど大きな規模ではない。
「WCBCT2004記念若手研究奨励基金」は、ボストン大会でも大会参加助成予定である。ボストン大会では、日本行動療法学会10名、日本行動分析学会16名、日本認知療法学会10名に対して、助成金を出すことが決まっている。多くの方がこれを活用していただきたいものである。
バルセロナ大会で目立ったことは、日本人がワークショップにどんどん出るようになったことである。
2001年のバンクーバー大会では、WCBCTの併設ワークショップに参加した日本人は、ごくわずかであった。英語のワークショップに日本人が参加することは、なかなかたいへんなことである。また、ワークショップというものがどのようなもので、いかに臨床スキルの向上に資するかということを理解していた日本人も少なかった。丹野は、たまたま何の気なしにウェルズのワークショップに出た。当時は、ワークショップとは、学会のシンポジウムや講演会のようなものであると勘違いしていたのである。しかし、ワークショップを初めて聞いて、非常に明快でわかりやすかったので、大きな感銘を受けた。これについては、拙著『認知行動療法ワークショップ2(金子書房)』にまとめた。
そこで、2004年の神戸WCBCTでは、丹野は、大会プログラム委員として、ワークショップをたくさん出すように企画し、その宣伝もした。また、英語と日本語のインターフェースにもかなり気を遣った。その結果、多くの英語ワークショップが開かれ、のべ2000人の参加者があった。こうした体験によって、ワークショップが、臨床スキルの獲得に非常に有効であること、参加して面白いこと、学会とは別にお金を払っても聞く価値が十分にあること、などが日本人にも理解されたようである。
今回のバルセロナ大会では、数人の日本人が参加していたワークショップもたくさんあった。これによって、日本人の認知行動療法の臨床スキルが向上することは間違いないだろう。日本でワークショップの講師を務めているような中堅・ベテランの先生が、WCBCTのワークショップに多く出ていたのも心強い。講師が本場のワークショップに触れれば、日本でのワークショップのレベルが上がるのも間違いない。
発表申込締め切り(ポスター、シンポジウム等)は、当初2007年1月31日だったが、3月31日まで延期された。
今回のバルセロナ大会を成功させるため、丹野はいろいろな活動をした。
日本の臨床家に認知行動療法の最前線に触れてほしかいからである。日本の臨床心理学は、世界の流れに背を向け、内向きになり、停滞状況にある。日本の臨床心理学は、欧米の1960年代に留まっており、世界から取り残されている。日本の臨床心理学者はこうした現状に触れ、危機感を持ち、日本の臨床心理学を改革していく原動力となっていただきたい。こうした一心で、活動を続けてきた。
「バルセロナWCBCTを成功させよう」キャンペーンは、2004年に神戸大会が終わった時に始まる。すぐに、丹野研のホームページに、「バルセロナWCBCTに参加しよう」のコーナーを作り、バルセロナ大会の情報を流した。日本から100人以上参加することを目標とした。
2006年には、シンポジウムを企画することに努力した。
2006年7月にパリで開かれたヨーロッパ認知行動療法学会(EABCT)では、バルセロナ大会の情報を仕入れた。バルセロナ大会の責任者である、Philip Tata氏と交渉して、パンフレットとポスターを大量に送ってもらった。Philip Tata氏は、日本からの参加者が多くなることを望んでいた。この時に、ホームページを改訂した。
2006年11月には、丹野が会長をした日本認知療法学会が東大駒場で開かれた。この大会は、バルセロナに向けて研究のレベルを上げることであった。ロンドン大学精神医学研究所のクラーク夫妻を招待して講演とワークショップをおこなってもらったのは、バルセロナに向けて、日本の認知行動療法の研究レベルを上げたかったからである。この大会では、会場に、バルセロナWCBCTの専用のブースを設けて、そこにPhilip Tata氏から送ってもらったパンフレットを置いた。それらはすべて配布されて、残りがなくなった。Philip Tata氏から送ってもらったポスターも展示した。さらに、丹野研で作成したチラシも作って大量に配布した。
認知療法学会のニューズレターである認知療法NEWSにおいても、バルセロナ大会について何回か宣伝した。
2006年暮れには、「WCBCT2004記念若手研究奨励基金」の公募が始まり、バルセロナ大会への反響は大きくなった。丹野は、その選考委員として、世話役的な役割をした。
近畿日本ツーリストが、バルセロナ大会へのツアーを企画した。これは丹野研のホームページでも掲載した。
2006年では、丹野が参加するいろいろな集会で、バルセロナ大会の宣伝チラシを配布した。9月の日本心理学会、日本心理臨床学会、健康心理学会などに、重いビラを運んで行って、ビラ置き場に置いたものである。11月の日本行動療法学会の理事会で、バルセロナ大会のパンフレットを配布した。2007年4月には、東京認知行動療法アカデミーのワークショップで、バルセロナ大会の宣伝チラシを作成して配付した。
これと同時に、2006~2007年には、シンポジウムやポスター発表の申請作業をすすめた。丹野研からは、大学院生のほとんどすべて9人が参加した。丹野研OB・OGの研究者もほとんどが参加した。石垣先生、毛利先生、杉浦先生、森本先生、山崎さん、佐々木さん。そして、ロンドン大学に留学中の小堀君も参加した。
丹野は、個人的に、eメールの署名の欄に、「バルセロナ大会を成功させよう」のバナーを入れた。これによって、丹野の出すすべてのメールがバルセロナ大会の宣伝となった。
以上のような宣伝がうまくいき、それなりに浸透したことはありがたい。
次は、「2010年ボストンWCBCTを成功させよう」キャンペーンに入るつもりである。
次回のWCBCTは、2010年にボストンで開かれる。
場所:アメリカのボストン(ボストン大学にて)
日時:2010年6月2日~5日
ボストン大学とABCTが主催するとのことである。
ボストン大会でも、WCBCTのリピーターを増やし、日本から100人規模の参加者を期待したい。
ポスター発表はもとより、積極的にシンポジウムを企画したい。
とくに若手の方はどんどん参加してもらいたい。「WCBCT2004記念若手研究奨励基金」は、ボストン大会では、日本行動療法学会10名、日本行動分析学会16名、日本認知療法学会10名に対して、助成金を出すことが決まっている。これを活用していただきたいものである。
次の2013年の大会の場所は未定。2008年にアメリカの認知行動療法学会で、開催場所が決定されるということである。
会場は、バルセロナ市の西のリゾート地域にあり、会場からは地中海を望むことができた。バルセロナは、建築家ガウディ、画家ピカソ、ミロ、ダリを排出した芸術都市である。会議が終わったあとは、こうした芸術や、地中海の新鮮な魚介類を使ったカタルーニャ料理を堪能した参加者も多かったのではないだろうか。
バルセロナWCBCTについても、日本認知療法学会の広報誌「認知療法NEWS」に、多くの方の参加印象記が公開されています。ぜひご覧ください。
http://jact.umin.jp/news/pdf/00042.pdf