2002年8月1日から、2003年の1月25日まで、文部科学省の在外研究員として、ロンドン大学精神医学研究所(IOP)に滞在しました。すでに私は日本に戻ってきましたが、今回はその体験をもとに、イギリス臨床心理学のガイドブックを作ってみました。
海外の臨床心理学についての情報は意外に日本には伝わってきません。旅行ガイドブックは、臨床の施設については解説していません。だから、ロンドンに来て、せっかくいろいろな観光名所を回っても、その近くに有名な臨床施設があることを知らずに帰国してしまうことが多いようです。
例えば、ロンドンにきた人の多くは、ビッグベンや国会議事堂やウェストミンスター寺院を見学します。しかし、その近くに有名なセント・トマス病院があって、そこから見た国会議事堂の眺めはとてもすばらしい、といったことまでは旅行ガイドブックには書いてありません。
また、大英博物館にもほとんどの人が行きますが、すぐ近くに神経学研究所やユニバーシティカレッジや教育学研究所があることは知らないで通りすぎてしまうようです。大英博物館から5分ほど歩くとこうした施設がみられると知れば、「ついでに寄ってみよう」という気にもなるでしょう。
また、地下鉄ジュビリー線で、ベーカーストリート駅でおりて、シューロックホームズ博物館をみたり、次のセント・ジョンズ・ウッド駅でおりて、ビートルズのアビーロードを見学する人は多いでしょう。ところが、その2つ先のフィンチリーロード駅まで行って、フロイト博物館や、有名なタビストック・クリニックやアンナ・フロイト研究所を見学する人は少ないでしょう。ここにこういう施設があるという情報が少ないためです。心理学の授業をしている方なら、フロイトが使っていた分析用の寝椅子とか、古代の発掘品で埋まっているフロイトの書斎などについて、講義のネタにできるでしょう。
さらに、文学好きの人の中には、旅行ガイドブックをみて、ロンドンの南にある「ロンドン漱石記念館」を訪ねて、夏目漱石のロンドン留学の奇跡を辿る人もいるでしょう。しかし、すぐ近くに有名なモーズレイ病院や精神医学研究所があることは、ガイドブックには載っていません。
そこで、臨床心理学のための旅行ガイドブックを作ってみたらどうかと思いました。「地球の歩き方・ロンドン臨床心理学」といったものです。こうした情報があれば、臨床心理学を仕事にしている人なら、「ロンドンに行った時に、ついでに臨床施設でも見てこようか」などと考えたり、「ただの観光ではなく、臨床施設を見る旅行を考えようか」などと思う方も出てくるかもしれません。あるいは、イギリスの臨床心理学を本格的に学ぼうという方も出てくるに違いありません。
ガイドブックに必要な要素は、以下のようなものでしょう。
①その施設の概要、歴史、組織、どんな研究者がいるか、見どころ、特徴などの情報、
②住所と行き方(最寄りの駅など)、
③ホームページのアドレス。
④地図、
⑤写真、
このホームページでは、①②③について簡単にご紹介します。④地図や⑤写真についても資料はあるのですが、ホームページに載せるには手間と時間がかかるので省略します。このようなガイドブックを本にしてまとめられたらよいのですが。
ロンドン大学は、表1に示すように、いろいろなカレッジや研究所が集まった寄り合い所帯です。日本の大学のように、最初から法学部・文学部・医学部というように計画的に作られたわけではありません。歴史的にいろいろな経緯でできたカレッジとか研究所をまとめて「ロンドン大学」という名前で呼ぶようになったのです。ロンドン大学のキャンパスは、ロンドン市内に広がっています。ロンドン大学の学生数は8万人であり、イギリスで最大です。オクスフォードやケンブリッジ大学の学生数がそれぞれ1万人ほどであることを考えると、ロンドン大学がいかに巨大であるかがわかります。日本人の学生や研究者も多く、合わせると1000人以上にはなると思います。
ロンドン大学のいくつかの学部は、「ブルームズベリー地区」に集まっています。この地区には、ユニバーシティ・カレッジ、教育学研究所、東洋アフリカ研究学校(SOAS)、バークベックカレッジなどがあります。まずこのブルームズベリ地区からツアーを始めることにしましょう。
その理由は、
①臨床心理学関係の施設がたくさんあるうえに、大英博物館などの文化的施設も集まっていること、
②ロンドンの中心部で交通の便も良いこと、
③大学関係者や学生には大学というシステムはなじみやすいこと、
④治安もよいこと、
⑤この地区にはホテルが多く並んでいて、比較的安いところが多いこと(夏目漱石もロンドンに来たときはこの地区に泊まったといいます)などです。
ブルームズベリー地区のシンボル的な存在が、「セナト・ハウス」です。高い建物で、よく目立ちます。
○ ロンドン大学のホームページ http://www.lon.ac.uk/colleges.htm
ユニバーシティ・カレッジは、ロンドン大学の中で最も古いカレッジです。1836年に創設されました。このカレッジが中心となって、ロンドン大学ができました。
カレッジといっても、単科大学ではなく、表2に示すように、芸術人文科学部や法学部など、いろいろな学部や研究所からなる総合大学です。
ユニバーシティ・カレッジは、地下鉄ウォレン・ストリート駅かユーストン・スクエア駅から歩いて5分ほどのところにあります。大英博物館からも歩いて5分ほどのところにあります。
おもな建物は、ガウアーストリート沿いに固まっています。キャンパスの中には神殿風の大きな建物があります。
また、ユニバーシティ・カレッジの臨床科学部(医学部)には、アンドリュー・ステプトー教授がいます。教授の専門は健康心理学で、久留米大学の津田彰先生の招きで日本にいらしたことがあります。ステプトー教授の著書『ストレス、健康とパーソナル・コントロール』は、二瓶社から翻訳が出ています(津田彰先生訳)。私もこの在外研究の間にステプトー先生のオフィスを尋ねてイギリスの健康心理学についてお話を伺いました。
ユニバーシティ・カレッジには、多くの日本人が研究のために留学しています。私は鹿児島大学の川畑先生とお会いして、いろいろと案内していただくことができました。
ユニバーシティカレッジの近くには博物館がたくさんあります。また、近くには、ウォーター・ストーンズという大きな書店があり、心理学や精神医学関係の本もそろっています。
○ユニバーシティ・カレッジのホームページ http://www.ucl.ac.uk/
ロンドンに来た人の多くは大英博物館(The British Museum)を訪れるでしょう。私も5~6回行きました。しかし、まだ全部を見終わっていません。サルコフスキス教授が来日したときに、大英博物館の大きな重いカタログをおみやげに持ってきてくれました。それだけ大英博物館はイギリス人の誇りなのでしょう。
大英博物館の中にリーディング・ルーム(Reading room)があります。ここは、マルクスが「資本論」を書いたところとして有名です。また、日本の南方熊楠が通っていたことでも有名です。よく、大英博物館で毎日夜遅くまで研究したという文科系の日本人研究者の話を聞きます。以前は、推薦状を持参してリーダー・パスをもらった研究者だけが入れる所だったそうです。しかし、現在では、誰でも中に入れるようになっています。そうした研究のためのリーディングルームの機能は、1998年から大英図書館に移ったためです。
大英博物館のリーディングルームは壮観です。巨大な吹き抜けのホールの壁全体が書庫になっているさまには圧倒されます。このためか、この部屋を訪れた見学者は、遠慮してか、中の閲覧室に入らずに部屋を出てしまうようです。しかし、閲覧室には自由に出入りでき、開架式ですので、自由に本を手にとって見ることもできます。一度中へ入って、本を手にとってみることをおすすめします。私もここでイギリスの臨床心理学についての資料を探してみました。
○住所 The British Museum, Great Russell Street, London WC1B 3DG
○ ホームページ http://www.thebritishmuseum.ac.uk/
ユニバーシティ・カレッジのそばに大英図書館(The British Library)があります。ここは、もともと大英博物館の中にあった図書館が移転したものです。1998年にオープンしたので、まだ新しい建物です。イギリスの図書館や博物館は古くて伝統がある建物の中にあることが多いのですが、この建物は、イギリスにしては珍しく、新しさと現代性を強調しています。ここには1200万冊の図書や資料があるということです。
図書館の催し物(Exhibition Gallery)や、レストランやカフェテリア、ショップ(書店)などは、誰でも自由に利用できます。これらのスペースはゆったりと作られており、雰囲気が良いので、長時間いてもくつろげます。ショップでは、大英図書館グッズなども売っていました(ブックマークとか文具など)。
閲覧室で本を読むためには、一定の手続きをして、リーダー・パスをもらう必要があります。旅行者がこのパスをもらうのは難しいかもしれませんが、研究者とか学生としてイギリスにしばらく滞在する場合は楽なようです。Admission Officeに行って、Application Formに、日本の住所、イギリスの住所、研究の目的(私の場合は臨床心理学と記入)などを記入して提出します。そして身分証を提示します(私の場合は、パスポートと精神医学研究所IDカードを提示)。それが認められると、その場で写真をとって、プラスティックのカードを作ってくれます。5年間有効のパスです。係の人は私のことをドクターと呼んで、ていねいに応対してくれました(大英図書館の職員からこう呼ばれると、かなり自尊心をくすぐられます)。このパスを提示すると、閲覧室に自由に出入りでき、開架式の図書を自由に手にとって読めますし、静かなゆったりした机で勉強できます。コンピュータも自由に使えます。日本の大学の図書館などとは比べものにならない豪華で静かな環境です。文献の仕事をしている研究者にはたまらない環境でしょう。このような大英図書館の環境で、マルクスが「資本論」を書いたとか、南方熊楠がNatureに掲載された論文を書いたというのが理解できます。私はイギリスの臨床心理学について調べものをするのに大いに役に立ちました。
○住所 The British Library, 96 Euston Road, London NW1 2DB
○ホームページ http://www.bl.uk
ユニバーシティ・カレッジの、生命科学部の中に、心理学科(Department of Psychology)があります。
心理学科には、クリス・ブレーウィン教授がいます。抑うつや不安障害の認知モデルの研究で著名です(ホームページは http://www.psychol.ucl.ac.uk/chris.brewin/index.htm)。邦訳は『原因帰属と行動変容』(ナカニシヤ書店)。また、Psychology Pressから出ている"Clinical Psychology: A Modular Course"というシリーズの編者です。また、ウタ・フリス教授は、自閉症の心の理論の研究で有名です。著書「自閉症の謎を解き明かす」と「自閉症とアスペルガー症候群」は邦訳があります(いずれも東京書籍)。
また、心理学科には、「精神分析ユニット」というセクションがあります。ここは歴史的に、アンナ・フロイト派の教育と研究の中心地として有名です。このユニットを創立したジョセフ・サンドラーは、アンナ・フロイトの仕事をバックアップしました。現在はピーター・フォナギー教授が指導しています。フォナギーは愛着理論をいろいろな臨床問題に応用して、"Attachment Theory and Psychoanalysis"といった本を出しています(Fonagy, 2001)。フォナギー教授は、精神分析の立場ですが、精神分析療法の治療効果の研究に力を入れています。1996年には、Fonagy教授とRothは、イギリス政府の要請を受けて,さまざまな治療効果研究をレビューし、「どの治療法が誰にきくのか(What Works for Whom)」という報告書を出し、きわめて大きな影響力を与えました。
また、心理学科には、臨床心理学博士のコース(Doctor of Clinical Psychology)もあり、ここを出ると、正式の臨床心理士となります。
○ 心理学科のホームページ http://www.psychol.ucl.ac.uk/home.html
このホームページには、心理学科の教員の研究領域が写真入りで解説されています。また、臨床心理学博士のコースについても詳しく載っています。
この近くに、神経学研究所(Institute of Neurology:ION)があります。この研究所はユニバーシティ・カレッジに属しています。
神経学研究所は、地下鉄ビクトリア線のラッセル・スクウェア駅から歩いて5分ほどのところにあります。
IONはニューロイメージング研究のメッカです。IONにはウェルカム・イメージング神経科学科があり、ここのFristonが開発したSPM(Statistical Parametric Mapping)という解析ソフトはたいへん有名です。これは個人差の大きい脳の形状を、基準となる脳の形状に合わせ、2群間の統計的な処理を行うことで賦活部位を推定するソフトウエアです。臨床家が使いやすいように作られており、そのソフトの訓練コースなども作られています。また、臨床への応用をさらに進めているのがロンドン大学の精神医学研究所です(これについては後述)。精神医学研究所のBullmore(現ケンブリッジ大学)は、BAMMという解析ソフトを開発しました。このような解析ソフトの発展によって、臨床家が画像研究に参加できるようになりました。こうして、統合失調症などの脳画像解析研究が爆発的に展開しました。FristonもBullmoreも精神医学者で、ときどき統合失調症の論文を書いているそうです。イギリスではこのようなニューロイメージング研究に臨床心理学者も参加しています。この項は、精神医学研究所に留学中の松本和紀先生(東北大学)に教えていただきました。
ウェルカム・イメージング神経科学科には、統合失調症の神経心理学で有名なクリス・フリスがいます。著書『分裂病の認知神経心理学』は邦訳があります(医学書院)。私もこの在外研究の間にフリス先生のオフィスを尋ねて、統合失調症の神経心理学についてお話を伺いました。フリス先生に会えたことはたいへん幸いなことでした。
神経学研究所には、すぐとなりに、国立神経学神経外科病院(The National Hospital for Neurology & Neurosurgery)があります。ここでも病院と連動した神経学の研究がおこなわれているのです。
神経学研究所には、多くの日本人が研究のために留学しています。IONで研究員をされている永井洋子先生は、ロンドン大学の精神医学研究所の心理学科でPhDを取った方です。たぶん日本人では始めてのことだと思います。永井先生には、IONをご案内いただきました。また、東京大学医学部の坂井先生もここで研究されています。
神経学研究所の面しているギルフォード・ストリートをずっと行って、右に曲がると「ディケンズの家」があります。ここは、作家のチャールズ・ディケンズが住んでいた家がそのまま保存されている記念館です。
○ ホームページ http://www.ion.ucl.ac.uk/
○住所 Institute of Neurology, Queen Square, London WC1N 3BG
近くには教育学研究所(Institute of Education:IOE)があります。ここはロンドン大学の中で独立した組織です(表1参照)。
教育学研究所は、地下鉄ビクトリア線のラッセル・スクウェア駅から歩いて5分ほどのところにあります。教育学研究所の建物はかなり大きいものです。日本の大学の教育学部などと比べてみると、建物の大きさも10倍はありそうです。
ここには12の学科があります。日本の大学の教育学部などを考えると、職員数でも10倍ほどの規模なのではないでしょうか。
その中に心理学人間発達学科(Psychology and Human Development)があります。
教育学研究所の地下には学生組合があり、そこの売店では、ロンドン大学のロゴ入りTシャツなどが手に入ります。
○ ホームページ http://ioewebserver.ioe.ac.uk/ioe/index.html
広いユーストン通りに面して、ウェルカム財団(Wellcome Trust)の図書館(Wellcome Library)があります。ウェルカム財団は、イギリスの臨床心理学のスポンサーのひとつです。イギリスの心理学科や医学部には、ウェルカム・ビルディングとか、ウェルカム講座といった名称をよくみかけます。私のいた精神医学研究所の心理学科の建物はウェルカム・ビルディングですし、ユニバーシティ・カレッジのフリス教授はウェルカム講座の教授です。これはウェルカム財団からお金が出て作られたという意味です。ウェルカム財団の研究フェローとしてイギリスで研究している日本人もいらっしゃいます。ウェルカム財団の創始者のヘンリー・ウェルカムという人は、ウェルカム社という薬の会社を作って大もうけをしたそうです。一時はグラクソという有名な製薬会社とも関係があったということです(現在はグラクソは、スミス・クラインという製薬会社と合併しています)。ウェルカム財団は、莫大な資産を持っていて、イギリスの医療や科学を資金的にバックアップしています。
この財団のビルの中には展示コーナーがあります。何でこんなにお金があるのかと不思議に思うほど、膨大なコレクションがありますし、ビルの中も豪華です。地下にはウェルカム社の歴史を展示するスペースなどもありました。
この財団のビルの中に、図書館やアートギャラリーがあります。図書館の中には、医療の歴史を辿る展示スペースや、財団の活動を展示するスペースなどがあります。財団のビルの入り口を入り、まず地下のクロークに荷物を預けます(この時にパスポートや身分証などを忘れないでください)。2nd Floorの受付へ行き、registerをしたいと告げると、書類が渡されます。それに氏名や日本の住所などを記入して提出します。するとプラスティックのDay Cardを渡してくれて、中に入れます。出るときは、このカードを返却します。研究目的で何回か通う場合は、長期間用のカードがもらえるようです。図書館の中には、医療関係の書物や資料の膨大なコレクションがあります。精神医学や心理学の歴史的な本もあって、私はイギリスの臨床心理学について調べものをするのに大いに参考にしました。
図書館では、多くの研究者が静かに調べものをしています。また、図書館のあちこちには、医療の歴史を辿る展示スペースがあり、その時々のいろいろな特集を組んでいます。私が行ったときは、「古書の修復技法」と「農場の医療」といったテーマでした。ゆったりとくつろげるスペースもあります。
ユーストン通りを渡った向かい側りの210番地にも財団のビルがあり、そこの1階がアート・ギャラリーになっています。番地をもじって"Two-Ten Gallery"と名づけられ、生命科学に関連した写真が飾られています。
キングスカレッジは、ユニバーシティ・カレッジと並んで、ロンドン大学の代表的なカレッジです。キングス・カレッジは、表3に示すように、10の学校や研究所からなっている総合大学です。学部学生が12000人、大学院生が約5000人いるそうです。これまで、キングス・カレッジからノーベル賞受賞者を7人出しているそうです。
キングス・カレッジには、次に述べるデンマークヒル・キャンパスやセント・トマス・キャンパスなど、いくつかのキャンパスに分かれます(表3参照)。
学校 | キャンパス | |
---|---|---|
人文科学校 Humanities | S | |
法学校 Law | S | |
社会科学政策学校 Social Science and Public Policy | SW | |
物理学工学校 Physical Sciences & Engineering | S | |
健康生命科学校 Health & Life Sciences | W | |
看護助産学校 Nursing & Midwifery | W | |
GKT学校 | ||
医学校 Medicine | GDT | |
生命医科学校 Biomedical Sciences | G | |
歯学研究所 Dental Institute | GDT | |
精神医学研究所 Institute of Psychiatry | D |
注)S:ストランド・キャンパス、W:ウォータールー・キャンパス、
G:ガイズ・キャンパス、
T:セント・トマス・キャンパス、
D:デンマークヒル・キャンパス
キングスカレッジの中で、文科系や基礎科学の学校を中心とするのがストランド・キャンパスです。
ストランド・キャンパスは、地下鉄のテンプル駅から10分ほどのストランド通りにあります。
ストランド・キャンパスの中には自由にはいることができます。ぜひ見学してください。キャンパスの入り口には、ノーベル賞受賞者の写真や説明が飾られています。
また、このキャンパスには、キングス・カレッジの英語センター(English Language Centre)があります。ここで英語を勉強する日本人も多くいます(ホームページはhttp://www.kcl.ac.uk/depsta/elc/index.html )。一年間このセンターで英語の準備をしてから、各学部のマスターコースに進む場合が多いようです。また、キングスカレッジの学生や大学院生で外国からきた人のための夜の英語コースなども開かれています。
ストランド・キャンパスの隣には、コートルード美術館とか、セント・メアリ・ル・ストランド教会などの観光スポットが並んでいます。ウォータールー橋を渡って、テムズ川対岸に渡ると演劇のナショナル・シアターがあります。これらを訪ねた際には、ぜひストランド・キャンパスも見学してください。
○キングスカレッジ・ストランドキャンパスの住所
King's College London, Strand, London WC2R 2LS
○キングスカレッジのホームページ http://www.kcl.ac.uk/college/index.html
セント・トマス病院(St Thomas Hospital)は、ロンドンの中心部にある大きな病院です。NHSに属する総合病院で、そのなかに精神科があります。
セント・トマス病院に行くには、地下鉄ウェストミンスター駅でおります。ウェストミンスター橋を渡るとすぐに、巨大な建物が見えてきます。これがセントトマス病院です。
この病院は、ロンドンの一級の場所にあります。ロンドンに来た人の多くは、ビッグベン(時計台)や国会議事堂、ウェストミンスター寺院などを見物します。ここまできたら、ぜひ、ウェストミンスター橋を渡って、セント・トマス病院に来ることをおすすめします。テムズ川をはさんで、病院の庭から見えるビッグベンと国会議事堂の姿はすばらしいものがあります。ビッグベンのまわりにはレストランやカフェがなく、ちょうどお腹がすく頃なので、ウェストミンスター橋の途中で売っているホットドックがおいしそうに見えます。ところが、買って食べてみるとこれがちっともおいしくないのです(イギリスの食べ物としてふつうのことですが)。これよりは、セント・トマス病院の中に入って、入り口の近くにある食堂で休んで、ガラス越しにビッグベンを見ながら、何か飲んだり食べたりしたほうがよほどましです。この病院の近くには、ロンドン・アイやバッキンガム宮殿などもあります。まさに観光名所の中にある病院です。
病院の中には、フロレンス・ナイチンゲール博物館があります。ナイチンゲールの肖像は、以前、イギリスのお札に印刷されていました。博物館のショップでは、ナイチンゲール・グッズや看護関係の本を売っています。
セント・トマス病院は、キングスカレッジのキャンパスにもなっています(表3参照)。つまり、医学校や歯学校の教育研究の病院としても機能しています。
ここのアダムソン・センターというところに、キングスカレッジ医学部の臨床心理学研究室があり、フィリパ・ガレティ教授のオフィスがあります。ガレティ教授は、精神病や妄想の心理学的メカニズムの研究で有名です。ガレティ教授の研究室からは、ビッグベンや国会議事堂が間近に見えます。
もうひとつ特筆すべきことは、ライル博士がこの病院で認知分析療法(CAT)を作ったことです。ガレティ教授のいるフロアに、CAT協会の事務室があります。1000人規模の会員がいるということでした。
私はガレティ教授の研究について教えていただくことが多く、いろいろな会議などに出させてもらいました。その会議のためにガレティ教授の研究室に行くことが多くありました。その帰り道は、ウェストミンスター橋を渡り、ここから見えるビッグベンや国会議事堂の美しさに見とれていました。ターナーが描いた『国会議事堂の火災』という有名な絵があります。1834年に国会議事堂が火災になり、その時の風景を描いたものですが、その絵がまさに病院の庭からの眺めと同じです(ターナーの絵は、テート・ブリテンにたくさんそろっています。それを見るとターナーの天才がよくわかります)。
セントトーマス病院は、火事などのため移転し、今の場所に建てられたのは1871年のことです。以前は、地下鉄のロンドン・ブリッジ駅の近くのガイズ病院の近くにあったそうです。今でもガイズ病院の近くには、12世紀に建てられた病院の一部が残っており、手術室が公開されています。ここはたいへん面白い博物館になっています。
○住所 St Thomas' Hospital, Lambeth Palace Road, London SE1 7EH
○セントトマス病院のホームページ
http://www.hospital.org.uk/index.htm
http://www.slam.nhs.uk/directory/depts/mainsites.asp
○フロレンス・ナイチンゲール博物館のホームページ
http://www.medicalmuseums.org/museums/florence.htm
次に、デンマークヒル・キャンパスに移ります。キングス・カレッジのデンマークヒル・キャンパスには、精神医学研究所や医学校や歯学校があります(表3参照)。
デンマークヒル・キャンパスに行くには、ロンドンのビクトリア駅から、鉄道に乗ります。15分ほどでデンマークヒル駅に着き、そこから歩いて10分ほどのところにあります。
精神医学研究所(Institute of Psychiatry:IOP)は、統合失調症の研究では、世界的中心のひとつです。統合失調症についての論文数が世界で一番多いとのことです。アメリカの国立精神衛生研究所NIMHよりも多いのです。
精神医学研究所で有名な精神医学者はたくさんいます。ざっとあげても、恐怖症のエクスポージャー法で有名なアイザック・マークス教授がいました(邦訳は『恐れと共に生きる』青山社、『行動精神療法』中央洋書出版部)。
また、統合失調症の家族の感情表出の研究で有名なジュリアン・レフ教授がいました(邦訳は『分裂病と家族の感情表出』金剛出版、『地球をめぐる精神医学』星和書店)。
発達研究で有名なマイケル・ラター教授(翻訳は『母親剥奪理論の功罪』誠信書房)がいました。
現在では、精神医学のロビン・マレイ教授、行動遺伝学のプロミン教授(邦訳は『遺伝と環境-人間行動遺伝学入門』)などがいます。
精神医学研究所では毎日2つか3つはセミナーが開かれていて、勉強会や研究発表がおこなわれています。このようなセミナーに参加することはとてもためになりました。外国から来る研究者も非常に多く、このセミナーで研究を発表していきます。
精神医学研究所は大きな組織です。表4に示すような10の学科からなっています。このうち、心理学科については、次にまとめて説明します。
精神医学研究所には、つねに日本人の研究者が留学しています。私が滞在した期間には、日本から10名近くの精神医学者や医療関係者が仕事をしていました。これらの先生方からいろいろとお話しを伺い、たいへん参考になりました。以前は、武井教使先生(現・浜松医科大学)と吉田敬子先生(現・九州大学)がIOPの上級講師(Senior Lecturer)をされていたとのことです。上級講師とは、日本の大学での助教授にあたります。IOPの教授と話していると必ず武井教使先生のことが話題にのぼり、先生が非常に高く評価されていることがわかります。その他にも、前述の木村駿先生とか、岩脇三良先生とか、九州大学の北山修先生などが精神医学研究所に留学されておられたようです。
○ 精神医学研究所のホームページ http://www.iop.kcl.ac.uk/iop/departments.stm
精神医学研究所の心理学科(Department of Psychology)は、ハンス・アイゼンクが1950年に創設した学科です。生理心理学のジェフリー・グレイ(邦訳は『恐怖とストレス』平凡社、『ストレスと脳』朝倉書店)や、不安障害の研究で有名なスタンレイ・ラックマン(邦訳は『恐怖の意味』誠信書房)などを輩出しました。統合失調症の心理学研究もさかんです。その中心はデイビッド・ヘムズレイ教授であり、私は在外研究の間、ヘムズレイ教授にずっとお世話になりました。
不安障害の研究については、ラックマンがカナダの大学に移ってからはやや手薄になりましたが、2000年に、デイビッド・クラークとポール・サルコフスキスとアンケ・エーラーズの3教授が、オクスフォード大学から移ってきました。彼らは精神医学研究所の出身で、ラックマン教授の弟子です。そして、クラークが心理学科の学科長をつとめるようになりました。それとともに、心理学科の新しい建物(Henry Wellcome Building)が建てられました。現在の心理学科は、認知行動療法や認知行動アプローチの世界的な研究機関となっています。心理学科の研究者は、表5に示すとおりです。
精神医学研究所の心理学科には、臨床心理学博士のコース(Doctorate of Clinical Psychology)が置かれており、ここを出ると、正式の臨床心理士となることができます。もともとアイゼンクが精神医学研究所に臨床心理学の訓練コースを作り、それがイギリスの臨床心理学の起源となったという歴史があります。
また、これとは別に、心理学の博士コース(Ph.D)も設置されています。ここを日本人として初めて卒業した方が前述の永井洋子先生です。
○精神医学研究所の心理学科のホームページ
http://www.iop.kcl.ac.uk/iop/Departments/Psycholo/index.stm
学科長 | デイビッド・クラーク(不安障害の認知行動理論) |
---|---|
教授 | デイビッド・ヘムズレイ(統合失調症の認知理論) |
エリザベス・カイパース(統合失調症の認知行動療法) | |
ティル・ワイクス(統合失調症の認知リハビリテーション) | |
ポール・サルコフスキス(不安障害の認知行動理論) | |
アンケ・エーラーズ(不安障害の認知行動理論) | |
グリシ・グッドジョンソン(司法心理学) | |
上級講師 | パドマル・デシルバ、ドミニク・ラムなど |
講師 | エマニュエル・ピーターズ、ダニエル・フリーマンなど |
精神医学研究所は、モーズレイ病院(Maudsley Hospital)の敷地の中に建っています。モーズレイ病院は、日本でいえば東京都立松沢病院のような大きな公立の精神科病院です。
モーズレイ病院に行くには、ロンドンのビクトリア駅から、鉄道に乗ります。15分ほどでデンマークヒル駅に着き、そこから歩いて10分ほどのところにあります。
この病院は、1923年に、ヘンリー・モーズレイという精神科医の寄付によって建てられました。現在では、NHS(国民健康サービス)に属しています。ベッド数は200床弱です。2年前に初めてモーズレイ病院を見たとき、世界的に有名なモーズレイとはこの程度なのかとびっくりした記憶があります。ベッド数が200床というと、日本の感覚からいうと、それほど大きな病院というわけではありません。イギリスの精神科病院は相部屋ではなく、個室であって、病院も全体にゆったりと設計されています。病棟は高くてせいぜい3階建てです。日本の精神病院は、もっと高い病棟もありますし、狭い敷地に窮屈に建てられていることもあります。
モーズレイ病院という名前は、統合失調症(精神分裂病)の臨床や研究にたずさわる人にとっては、世界的に有名です。それはその隣にロンドン大学精神医学研究所があり、その研究教育の病院として機能しているからです。臨床心理学においてもモーズレイ病院の名前は出てきます。性格検査のひとつにMPIがありますが、これはモーズレイ・パーソナリティ・インベントリ(Maudsley Personality Inventory)の略です。つまり、アイゼンクらが精神医学研究所での研究をもとにこの検査を作ったのですが、病院の名前を検査名に取り入れたわけです。精神医学研究所の研究者の多くは、モーズレイ病院で研究や臨床をおこなっています。
モーズレイ病院の中に入ってみましょう。メイン・エントランスから中に入ることができます。病院で仕事をしている方が見れば、日本の病院とそれほど違わないことに気がつくでしょう。もちろん部外者は中には入ることはできませんが、ドアのガラス窓を通して病棟の中を見ることができます。
廊下を歩いていくと、病院のショップがあります。モーズレイの名前の入ったブックマーク(しおり)とマグカップを売っていたので、私は購入しました。近くには、職員用のレストランやカフェテラスもあります。よくそこで精神医学研究所の方と話をしました。
ロンドン地区のNHSの公立精神科病院としては、モーズレイ病院のほかに、後述のベスレム・ロイヤル病院が有名です。2つの病院は統合されていて、病院間にはシャトルバスが走っています。
○住所 Maudsley Hospital, Denmark Hill, London SE5 8AZ
○ モーズレイ病院のホームページ http://www.iop.kcl.ac.uk/iop/departments.stm
夏目漱石がロンドンに留学したのは1901年~1902年のことであり、私の在外研究のちょうど100年前でした。ロンドンでの漱石の資料を展示してあるのがこの博物館です。漱石が一番長くいた下宿の向かい側にあります。この博物館は、モーズレイ病院からも近いのでぜひ尋ねてください。
ベスレム・ロイヤル病院(Bethlem Royal Hospital)は、ロンドンの郊外にある有名な精神科病院です。この病院は、NHS(国民健康サービス)に属しています。広大な敷地の中に、点々と、昔ながらのレンガ造りの建物が建っています。精神科の病院というよりは、広い公園のような感じで、散歩するにもよいでしょう。敷地内には、教会や博物館などもあります。
ベスレム・ロイヤル病院に行くには、ロンドンブリッジ駅から鉄道に乗ります。30分ほどでエデンパーク駅に着き、そこから歩いて20分ほどのところにあります。ベスレム・ロイヤル病院とモーズレイ病院の間にはシャトルバスが走っており、職員はこれを利用しています(所要時間は30分)。
ベスレム・ロイヤル病院がシモン・フィツマリーによって建てられたのは1247年のことでした。今から750年前のことです。その後、病院の敷地は転々としました。現在のモンクス・オーチャード・ロードに移転したのは1930年のことです。その後、ベスレム・ロイヤル病院は、モーズレイ病院と統合されました。ロンドン大学の研究教育の病院として機能しており、精神医学研究所の研究者の多くは、ベスレム・ロイヤル病院かモーズレイ病院で研究や臨床をおこなっています。ヘムズレイ教授やピーターズさんなど、心理学科の研究者もここで臨床と研究をおこなっています。私は、ピーターズさんに頼んで、この病院のフィツマリー病棟でおこなわれた病棟回診に参加させてもらいました。後に、石垣琢麿さんがロンドンを訪れた時にも、ここでの病棟回診に参加することができました。また、ピーターズさんがおこなっているハンドオーバーという看護スタッフとの事例検討会もここの病棟でおこなわれています。
ベスレム・ロイヤル病院の正門を入って右側すぐに病院の博物館があります。病院の歴史や人物の絵や写真が飾られており、イギリスの精神科医療の歴史をみることができます。イギリス人は本当に歴史を重んじる人たちです。また、この病院に入院した有名な画家の描いた絵なども展示されています。ここのミュージアム・ショップでは、 ベスレム・ロイヤル病院や精神科医療に関する本やパンフレット、入院した画家の作品の絵はがきなどを販売しています。
○住所 Bethlem Royal Hospital, Monks Orchard Road, Beckenham, BR3 3BX
○ベスレム・ロイヤル病院のホームページ
http://www.slam.nhs.uk/directory/depts/mainsites.asp
○病院の博物館のホームページ http://www.medicalmuseums.org/museums/bethlem.htm
LEOとはLambeth Early Onset Serviceの略で、ランベス地区に設けられた精神病に対する早期介入サービスのことです。ランベス地区は、ロンドンの南部にあり、26万ほどの人が住んでいます。
イギリスでは、財政的な事情から、ここ数年で、精神科のベッド数を大幅に減らしています(1990年頃からベッド数は半分に減っているとのこと)。そこで、病院での医療ではなく、それに替わるものが模索され、次の4つが中心となっています。
①早期介入(Early Intervention)
②コミュニティ・メンタルヘルスサービス(Community Mental Health Service)
③訪問医療(Assertive Outreach)
④在宅医療(Home Treatment)
このように早期介入は、ここ数年で大きくクローズアップされています。バーチウッド教授率いるバーミンガムの早期介入センター(IRIS)がパイオニアとなり、それが成功したために、これをモデルとした早期介入センターがイギリスに50カ所作られることが決まったそうです。
ロンドン地区でも、このような早期介入の施設がたくさん作られています。その中で最も有名なのが、ランベス地区のLEOサービスです。ほかにも、サウスウォーク地区のFIRSTチームとか、クロイドン地区のCOASTチームとか、セントジョージ病院の早期介入チームなどがあるそうです。
LEOがサービスを始めたのは2000年のことで、できたてほやほやのサービスです。LEOは、以下の3つのチームからなっています。
①危機アセスメント・チーム(Crisis Assessment Team:CAT)、
②入院ユニット、
③コミュニティ・チームの3つです。
①危機アセスメント・チームは、町中のマンションにあるLEOの事務所に常駐しています。医師や家族から紹介されたクライエントと会って、アセスメントをおこない、その後の対処を決めます。
②入院ユニットは、ランベス病院の中にあるLEO専用の建物(リー・ハウス)で、治療をおこないます。
③コミュニティ・チームは、やはりLEOの事務所に常駐して、24時間体制で、治療や家庭訪問などをします。イギリス社会は、9時から5時まで仕事をして、土日は完全に休みます。このような社会の中で24時間体制の仕事をするということは非常に例外的なことです。
治療は、薬物療法のほかに、認知行動療法・家族介入・危機介入といった心理社会的な治療がおこなわれます。その中心に臨床心理士がいるわけです。いずれのチームも、精神科医・臨床心理士・看護師・ソーシャルワーカーなどの他職種集団となっています。
さらに、今年から④OASISチームが新たに加わりました。これは、精神病の前駆症状の段階から介入していくもので、まだ実験的な段階ということです。
LEOを立ち上げたひとりがキングスカレッジのガレティ教授であり、彼女は現在、LEOの治療効果研究を組織しています。私はこの効果研究の会議に参加させてもらったり、LEOチームの中心人物である精神科医のパディ・パワー先生に紹介してもらいました。そして、LEOの施設を社会に紹介するオープンデーというのがあったので、見学に行きました。
LEOに行くには、地下鉄ビクトリア線かノーザン線のストックウェル駅でおります。そこから歩いて10分ほどのところに、ビールハウスという建物があり、そこの1階がLEOの事務所です。LEOコミュニティ・チームと危機アセスメント・チームがいます。5つくらいの部屋からなっており、小さな集会所があったり、地域の保健所のような感じです。
さらにそこから5分ほどのところに、ランベス病院があります。そこのリー・ハウスがLEO入院ユニットです。リー・ハウスは、まだ新しいこともあって、まるでホテルとかユースホステルのような感じでした。精神科の病院という雰囲気ではありません。LEOはできたてほやほやのパイオニア的存在ですが、何年かすると、イギリス中にこのようなチームができているでしょう。
○住所 LEO入院ユニット(ランベス病院内) Reay House, Lambeth Hospital, 108 Landor Road, London SW9 9NT
LEOコミュニティ・チーム(ビールハウス内) Beale House 3-6, Lingham Street, Stockwell, London SW9 9HG
○ホームページ LEOのホームページはまだありません。
OASISチームのホームページは http://www.OASISLONDON.COM
1891年に創設された歴史のある大学です。カレッジといっても、単科大学ではなく、14の学部からなる文科系の総合大学です。
ゴールドスミス・カレッジに行くには、地下鉄イースト・ロンドン線のニュー・クロス駅またはニュー・クロス・ゲート駅でおります。そこから徒歩で5分ほどです。
心理学科には、8人の教授を含めて、24人のアカデミック・スタッフがいます。研究グループは3つです。①Cognition, Brain and Behaviour、②Development and Social Processes、③Occupational Psychology and Psychometrics。
ゴールドスミスカレッジの心理学科には、神戸松蔭女子学院大学の藤本浩一先生が留学していらっしゃいます。
また、心理学科とは別に、職業コミュニティ教育学部(Professional and Community Education:PACE)があります。ここでは、Psychotherapeutic Studiesという科目があり、その中には、①Art Psychotherapy、②Counselling、③Group Psychotherapy、④Psychodynamic Studiesといった科目があります。
この中の②カウンセリングでは、Diploma in Cognitive Approaches to Counselling &: PsychotherapyとMSc in Rational Emotive Behaviour Therapyの2つの学位をとれるようになっています。
②カウンセリングを担当しているのが、有名なウィンディ・ドライデン教授です。彼は、カウンセリングや心理療法について、実に130冊の本を編集しています。ドライデンの仕事を抜きにして、イギリスのカウンセリングは語れないでしょう。 私もドライデン編集の『認知臨床心理学入門』(東京大学出版会)を監訳しています。
○ゴールドスミス・カレッジの住所
Goldsmiths College, University of London, New Cross, London SE14 6NW
○地図 http://www.goldsmiths.ac.uk/find-us/campus-map.php
○ホームページ http://www.goldsmiths.ac.uk/index.php
エリザベス女王が住んでいるウィンザー城の近くに、この大学があります。ここはロンドン大学の中で独立した組織です(表1参照)。キャンパスはとても広く、建物はまるでお城のように壮大です。キャンパスに一度行ってみると、その美しさに魅了されてしまうことでしょう。
ここは、認知心理学の研究者として有名なマイケル・アイゼンクがいます。また、臨床心理学博士のコース(Doctorate of Clinical Psychology)が置かれています。このコースを出ると、正式の臨床心理士となることができます。
○ホームページ http://www.rhul.ac.uk/
ここのホームページには、キャンパスのバーチャル・ツアーのコーナーがあります。ぜひ一度みてください。
ジークムント・フロイトは1938年に、ナチスに追われてオーストリアを出て、ロンドンに亡命しました。その翌年の1939年に83歳で亡くなります。フロイトはイギリスでは尊敬されていて、ロンドンに来たときは市民から暖かく迎えられたとのことです。その当時の家がそのまま保存されて、フロイト博物館(The Freud Museum)になっています。
フロイト博物館に行くには、地下鉄ジュビリー線のフィンチリー・ロード駅でおります。そこから歩いて10分ほどのところにあります。あたりは静かな高級住宅地です。ふつうの家がそのまま博物館になっています。気をつけないと見過ごしてしまいます。English Heritageをあらわす青い標識が2枚、壁に打ち付けてあります。一枚には次のように書かれています。"SIGMUND FREUD 1856-1939 Founder of Psychoanalysis lived here 1038-1939"
もう一枚には次のように書かれています。"ANNA FREUD 1895-1982 Pioneer of Child Psychoanalysis lived here 1038-1982" 私が初めて行ったのは2000年のことでしたが、大きな建物をイメージしていったので、はじめは通り過ごしてしまいました。なかなか面白いので、その後数回は訪れたでしょうか。
1階には、フロイトの書斎と書庫が保存されています。フロイトが使っていた分析用の寝椅子が有名です。意外に小さいのに驚きます。また、アングルのエディプスの絵とか、グラディーバのレリーフ、レオナルド・ダ・ヴィンチの「聖アンナと聖母子」などの絵が飾ってあり、フロイトの著作に親しんでいる人にとっては、感慨深いものがあります。書斎は、古代の骨董品で埋まっています。こうした骨董品やフロイトの蔵書を見ていると、時間のたつのを忘れます。とくにエジプトの骨董品が多く、これは当時『モーゼと一神教』を書いていたためでしょう。また、ダイニングルームには、日本の古沢平作がフロイトに送った富士山の絵が掛けられていました。これには「昭和4年作山中湖」と漢字で書かれています。
2階は、アンナ・フロイトの部屋があります。ここにはアンナが使った「はた織り機」が置いてあります。また、本棚には、昔に日本で訳されたフロイト選集が並んでいます。さらに、2階にはビデオルームがあって、亡命当時のフロイトを映画で見ることができて、たいへん興味深いものがあります。なお、フロイトの孫のルシアン・フロイト(1922年-)は、イギリス美術を代表する画家となりました。2002年にルシアン・フロイトの大規模な回顧展がテート・ブリテンで開かれ、大盛況でした。その他にもテレビディレクターとか、フロイトの子孫には著名人が多いとのことです。
1階のミュージアム・ショップでは、ユーモアあふれるフロイトグッズがたくさんあります。例えば、フロイトの人形、Tシャツとか、マグカップ、ポスターなど、なかなかしゃれたものが多いです(私は何回か訪れるうちに、気がつくと、多くの種類を買っていました)。「ego」「ido」「superego」という3種類のバッジもあります。その日の気分にあわせて付けかえるもののようで、ユーモアにあふれています。フロイトに関する書籍も何種類かあります。
○フロイト博物館の住所 20 Maresfield Gardens, London NW3 5SX
○フロイト博物館のホームページ http://www.freud.org.uk/index.html
タビストック・クリニック(The Tavistock Clinic)は、精神分析や心理療法のメッカともいえる研究所です。
タビストック・クリニックは、フロイト博物館から歩いて10分ほどのところにあります。大きなビルディングで、前にはフロイトの銅像が建っていますので、すぐにわかります。ここもたいへん静かなところです。
タビストック・クリニックはいろいろな仕事をしています。第1は臨床の実践です。タビストック・クリニックは、NHS(国民健康サービス)に所属する治療機関であり、北部ロンドン地区のメンタルヘルスを担当しています。①子どもと家族、②思春期、③大人の3つの学科(Department)に分かれて心理療法をおこなっています。
第2の仕事は研究です。タビストックは、1920年に創立されて以来、世界的に有名な臨床家・研究者を輩出してきました。1940年代にはW・ビオンがグループ心理療法を発展させます。50年代にはジョン・ボールビィが愛着理論や母子分離の研究をはなばなくし発展させます。これを受けて、60年代には、幼児観察法が大きく展開し、世界の発達心理学をリードします。60年代から70年代には、デイビッド・マランとマイケル・バリントが、ブリーフ心理療法のモデルを示して研究をおこないます。60年代にはR・D・レインが実存哲学の影響を受けた仕事をし、のちに反精神医学の運動を展開します。また、60年代からは、システミック家族療法が大きく展開し、世界の心理療法をリードします。90年代にはいると、質的方法を用いた研究(グラウンド・セオリー、会話分析など)がおこなわれるようになります。それと同時に、RCT(Randomised controlled trial)を用いた心理療法の効果研究がおこなわれるようになりました。イギリスの心理療法やカウンセリングは、実証にもとづく(evidence-basedな)考え方を大きく取り入れるようになっています。
研究や臨床は、タビストック・クリニックといろいろな大学との連携でおこなわれており、とくにエセックス大学、ミドルセックス大学、東ロンドン大学、バークベックカレッジ(ロンドン大学)、ユニバーシティ・カレッジ(ロンドン大学)の5大学との連携が強いとのことです。教授はこれらの大学の教授との兼任になっています。
第3の仕事は、臨床のトレーニングです。55のコースがあり、1500人が学んでいるとのことで、メンタルヘルスの訓練機関としてはイギリスで最大の規模を誇ります。コースは、いろいろなものがあります。入門コース、子どもの心理療法、大人の心理療法、システミック心理療法(家族療法)などのコースがあります。その他に、教育心理学、精神医学、ソーシャルワーク、看護学などの専門家のための卒業後の訓練コースもあります。ほとんどは1年単位のコースです。日本からも多くの人が留学しています。
私は森野先生にご案内いただいて、タビストック・クリニックの中を見学することができました。図書館にも入れます(有料)。私はイギリスの臨床心理学について調べるためにここを利用しました。
タビストック・クリニックは、いろいろな出版物を出しています。タビストック・クリニック・ブック・シリーズはその代表です。こうした本は、タビストック・クリニックの中の売店や、近くのカルナック書店で手に入れることができます。
○タビストック・クリニックの住所
The Tavistock Clinic, 120 Belsize Lane, London NW3 5BA
○タビストック・クリニックのホームページ http://www.tavi-port.org/NEWindex.htm
精神分析や臨床心理学関係の書店です。決して大きな店ではありませんが、かなり充実しています。精神分析・心理学関係では、ロンドンで一番の品揃えでしょう。東京都立大学の永井撤先生に教えてもらいました。地下鉄ジュビリー線のフィンチリー・ロード駅の駅前にあります。
フロイト博物館の近くにハムステッド・ヒースという巨大な公園があり、その隅にハイゲート墓地があり、そこにカール・マルクスの墓があります。フロイト博物館から行くには結構な距離があるので、地下鉄フィンチリー・ロード駅のタクシー乗り場からタクシーを使った方がよいでしょう(9ポンドくらい)。周りの墓石はビクトリア朝様式の優雅なものですが、その中に混じって、マルクスの墓がそびえています。マルクスの首が墓石の上に載っているのです。とても異様で、一見の価値があります(一度見たら夢に出てきそう)。
カール・マルクスは1849年にイギリスに亡命し、大英博物館の図書館で『資本論』を完成させ、1883年に亡くなります。20世紀に最も大きな影響を与えた思想家はマルクスとフロイトであると言われていますが、そのふたりがロンドンのこの地区に関係したということは興味深いことです。ついでにいうと、夏目漱石も一時はこの近くの下宿に住んでいたことがあります。
フロイト博物館のすぐそば、ちょうど斜め向かいのあたりにアンナ・フロイト・センター(Anna Freud Centre)があります。気をつけないと見過ごしてしまうほどです。私は、フロイト博物館に行くときに、何気なく見ていたら、ここを見つけました。高級住宅地の中の1軒で、"The Anna Freud Centre"と小さな看板が出ているだけです。中に自由に入れるわけではありません。
ここでは、アンナ・フロイト派の教育などの活動をおこなっています。アンナ・フロイトは、メラニー・クラインと並んで、小児の精神分析学的研究で著名です。アンナ・フロイトは父とともに1938年にロンドンに亡命し、その後、アンナ・フロイトセンターを作って、防衛機制論などの仕事を完成させます。アンナ・フロイト・グループの臨床や研究を強力に受け継いだのは、ロンドン大学のユニバーシティ・カレッジにおける精神分析ユニット(Psychoanalysis Unit)でした。はじめは、ジョセフ・サンドラーが指導し、現在はピーター・フォナギーが指導しています。
なお、マリリン・モンローがアンナ・フロイトの分析を受けていたと何かの本に書いてありました。
○住所 Anna Freud Centre, 21 Maresfield Gardens, London NW3 5SD
○ホームページ http://www.annafreudcentre.org/home.html
オクスフォード大学は12世紀にできたイギリスで最も古い大学です。大学のホームページによると、オクスフォード大学関係者のノーベル賞受賞者は45人にのぼるそうです。学生数は約1万人です。この大学は臨床心理学と関連の深い大学です。
オクスフォードに行くには、ロンドンのパディントン駅からオクスフォード行きの鉄道の列車に乗ります。1時間ほどでオクスフォード駅に着きます。
オクスフォードの街全体に、大学が広がっています。オクスフォード大学で長く仕事していたサルコフスキス教授は、「オクスフォードに行ったら、セント・マリー教会に登ってみるといいです」と勧めてくれました。ここの塔にのぼると、オクスフォードの街が見渡せます。オクスフォードの商店街はたいへんきれいで、モダンな新しい店も多く、ロンドンとは大違いです。昼間は比較的静かですが、夜になると対照的に、パブやクラブなどは学生であふれ、活気づきます。はじめてオクスフォードを訪れた時は、夜の騒々しさに驚きました。
オクスフォード大学の教育制度について、心理学科のクラリッジ教授に聞くことができました。オクスフォードでは、学生の教育組織であるカレッジ(学寮)と、研究組織であるユニバーシティ(大学)が分かれています。これは、オクスフォード大学やケンブリッジ大学に特徴的な制度です。オクスフォード大学には、ユニバーシティ・カレッジとか、クイーンズ・カレッジ、マートン・カレッジなど、35校のカレッジがあります。学生はどこかのカレッジに所属し、そこの学生寮で生活します。カレッジからデパートメント(学科)の講義を受けに通います。ひとつのカレッジの学生数は200人~600人と小規模なので、大学の教官から個人指導(テュートリアル)を受けることができます。週1時間、教官と学習や学習目標について討論するそうです。こうした学寮制度はたいへん有効で、日本でも戦前の旧制高校がモデルとしていました。こうした制度を復活させれば日本の大学教育もかなり向上するのでしょうが、今のマスプロ化した大学では難しい話です。
多くのカレッジは、一般の人も開放されています。いかめしい門を入ると、古い建物に囲まれた中庭が見えます。中庭には、美しく手入れされた芝生があります。13世紀にできたという歴史の重みと、静かなアカデミックな雰囲気を味わうことができます。このような雰囲気はたいへん特徴的で、日本の大学ではなかなか味わうことのできないものです。
研究組織であるデパートメント(学科)は、たくさんあります。大きく、人文科学、社会科学、生命環境科学、数理物理科学、医科学の5つのdivisionに分かれています。
○ホームページ http://www.ox.ac.uk/
医科学divisionの中に、実験心理学科(Department of Experimental Psychology)があります。学部学生だけで300人もいるそうで、イギリスで最も大きな心理学科となっています。
実験心理学科がある場所は、科学関係の学科が集まっているエリアです。ユニバーシティ公園のすぐそばです。
臨床心理学関係の教官としては、ゴードン・クラリッジ教授とマリイ・マーチン教授がいます。クラリッジは、パーソナリティと統合失調症の関係についての研究で知られており、分裂病型人格障害(Schizotypy)についていろいろな研究を発表しています。私もこの在外研究の間にフクラリッジ教授のオフィスを尋ねて、分裂病型人格障害の研究についてお話を伺い、共同研究の話をしました。
○実験心理学科の住所 Department of Experimental Psychology, University of Oxford, South Parks Road, Oxford, OX1 3UD
○ホームページ http://www.psych.ox.ac.uk/
オクスフォード大学の臨床心理学は、精神医学科(Department of Psychiatry)のワーンフォード病院(Warneford Hospital)を拠点としています。
ワーンフォード病院がある場所は、オクスフォード駅からやや離れており、タクシーで10分ほどの所です。
精神医学科では、統合失調症研究グループ、摂食障害研究グループ、不安障害研究グループなどに分かれて研究がおこなわれています。統合失調症グループを率いるティム・クロウ教授は、統合失調症の2症候群仮説の提唱者として、たいへん有名な研究者です。また、摂食障害グループを率いるクリス・フェアバーン教授は、摂食障害の認知行動療法の開発で著名な精神科医です。不安障害研究グループは、以前はクラークとサルコフスキスとエーラーズの3人が率いていましたが、この3人は2000年10月にロンドン大学精神医学研究所に移りました。
また、精神医学科では、臨床家のトレーニングもおこなっていて、例えば、Diploma in Cognitive Behaviour Therapyといったコースがあります。これを担当しているのは精神科医のメラニー・フェンネルさんです。
ワーンフォード病院の中には、臨床心理学の博士コースが設けられています。これは病院の中のアイシス教育センター(The Isis Education Centre)というところでおこなわれています。このコースのディレクターはスーザン・ルウェリン先生です。このコースは、形式的にはオクスフォード大学のハリス・マンチェスター・カレッジに所属しており、ルウェリン先生をはじめとする教官と学生は、このカレッジに所属するということです。
私は、2000年10月に、ワーンフォード病院のアイシス教育センターを訪ねました。イギリスの臨床心理学と臨床心理士養成について聞くために、東京大学教育学研究科の下山晴彦先生といっしょにルウェリン先生とジョン・ホール先生を訪ねました。その時は、ここでチューターをしているステファン・シューラーさんともお話しをしました。
また、ホール先生は、その日に、私たちを自宅に呼んで歓待してくれました。自分でごちそうを料理してくれて、とても暖かい雰囲気だったのが印象的です。ホール先生は、Professional Adviser in Clinical Psychologyであり、"What is Clinical Psychology?"という本の編者です。この本は、筆者が「イギリスの臨床心理学を知るためにはどのような本がよいか」とイギリスの臨床心理学者に尋ねてみて、最も多く推薦された本です。何カ国語かに翻訳されている名著であり、「いい本だからぜひ読んでください」と私にくれた先生もいるほどです。また、ホール先生は、リハビリテーションのための評価(REHAB:Rehabilitation Evaluation of Hall And Baker)を作ったことでも有名です。REHABの日本語版も作られています。
○ワーンフォード病院の住所
Warneford Hospital, Headington, Oxford OX3 7JX
○ホームページ
精神医学科 http://www.psychiatry.ox.ac.uk/index.html
アイシス教育センター http://www.hmc.ox.ac.uk/clinicalpsychology/index.html
ケンブリッジ大学は、オクスフォード大学と並んで歴史のある大学です。学生数は約1万人です。オクスフォードが文科系で有名なのに対して、ケンブリッジは理科系で有名です。
ケンブリッジに行くには、ロンドンのキングスクロス駅またはリバプールストリート駅からケンブリッジ行きの鉄道にのります。1時間ほどでケンブリッジ駅に着きます。ケンブリッジの街全体に、大学が広がっています。
ケンブリッジ大学も、オクスフォードど同じく、学生の教育組織であるカレッジ(学寮)と、研究組織であるデパートメント(学科)が分かれています。ケンブリッジ大学には、トリニティ・カレッジ、キングス・カレッジ、ダウニング・カレッジなど、31校のカレッジがあります。カレッジでの個人指導や少人数の指導は、スーパービジョンと呼ばれます。カレッジは一般の人に開放されている場合もあるので、ぜひ中を見てください。ケンブリッジ大学については、『ケンブリッジのカレッジ・ライフ』とか『遙かなるケンブリッジ』藤原正彦(新潮文庫)などのエッセイが出ています。
ケンブリッジはノーベル賞が多いことで際だっています。今年は日本では小柴氏と田中氏のダブル受賞で大喜びでしたが、ケンブリッジ大学でも、今年はスルトンとブレナーのダブル受賞がありました。ケンブリッジ関係者のサイトをみたらケンブリッジ大学のノーベル賞受賞者は80人とのことです。これに対して、オクスフォード大学関係者は30人だそうです。この点でよく東大と京大の違いと同一視されるのですが、桁が違います。また、ケンブリッジ大学の80人という数字は、2位のシカゴ大学(73人), 3位のコロンビア大学(64人), 4位のMIT(56人), 5位のハーバード大学 (40人)などを抜いて世界一なのだそうです。ケンブリッジを出た臨床心理学者と話していたら、ケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジだけでフランス全体の受賞者より多いと言っていました。さきほどのサイトによると、トリニティ・カレッジは30人の受賞となっています。ただ、このサイトはケンブリッジ関係者のものなので、かなり甘めの数字になっています。オクスフォード大学のホームページには、オクスフォード大学関係者のノーベル賞は45人と載っていますので、どこまでを関係者とするかによって受賞者数は違うようです。
ケンブリッジ大学の研究組織は、100以上のデパートメント(学科)に分かれています。場所によっていくつかのまとまりに分かれています。アデンブルック・サイト、ダウニング・サイト、シジウィック・サイトなどです。このうち、アデンブルック・サイトには、大学病院があり、ここに精神医学科(Department of Psychiatry)があります。
○ホームページ http://www.cam.ac.uk/
ケンブリッジ大学のダウニング・サイトには、実験心理学科や生理学科、解剖学科などが集まっています。このダウニング・サイトだけでも、ノーベル賞受賞者が数十人いるそうです。
ダウニング・サイトは、ケンブリッジ駅から歩いて15分ほどの所にあります。となりには、広々としたダウニング・カレッジがあります。
実験心理学科(Department of Psychology)は大きな建物です。心理学だけでこれだけの建物ひとつを占めているということはうらやましい限りです。教官だけで25人近くのスタッフがいます。臨床心理学関係では、バロン-コーエン教授がいます。バロン-コーエンは、自閉症の「心の理論」の研究を強力に押し進めている研究者です。「自閉症研究センター」を設立して研究していました。バロン-コーエンの著書のいくつかは邦訳されています。『自閉症入門―親のためのガイドブック』中央法規出版、『心の理論―自閉症の視点から』八千代出版、『自閉症とマインド・ブラインドネス』青土社などです。
ケンブリッジ大学には、学生や研究者など数百人の日本人がいるということです。私は、ダウニングサイトの解剖学科にいる筒井健一郎さんを訪ねて、はじめてケンブリッジ大学に行きました。筒井さんは、東京大学の大学院で心理学を専攻し、その後、ケンブリッジ大学の解剖学科でResearch Associate(助手)をしています。解剖学科というと、一見、心理学とは別の研究のように見えますが、実験心理学科や生理学科は同じサイト内にあり、交流が深いということです。いっしょの研究会なども多く、学科の壁のないところがすばらしいとのことでした。その時は実験施設の中などにも案内してもらいました。その後、私の研究室の関係者がロンドンに来た時も、筒井さんにケンブリッジ大学を案内していただきました。その時は、長谷川寿一先生(東京大学総合文化研究科)と長谷川真理子先生(早稲田大学)のご夫妻が在外研究でいらしたダーウィン・カレッジとか、ワトソンとクリックが議論したパブなどを見学することができました。また、ケンブリッジ大学出版会(Cambridge University Press)の書店には、ここで出版された心理学関係の本が多く並んでいます。
○実験心理学科の住所
Experimental Psychology, Department of Downing Street, Cambridge CB2 3EB
○実験心理学科のホームページ http://www.psychol.cam.ac.uk/
ケンブリッジ大学には、臨床心理学の博士コースはありませんが、基礎心理学からの臨床へのアプローチはさかんです。その中心は、認知脳科学ユニット(Cognition and Brain Sciences Unit)という研究所です。
認知脳科学ユニットは、ケンブリッジ駅から歩いて10分ほどの所にあります。
この研究所は、1944年にバートレットとクレイクが創立したもので、これまでブロードベントやバッドリーが所長をつとめていますから、そうそうたる顔ぶれです。
ここでの研究は、注意、感情、記憶と知識、言語という4分野に分かれています。このうち、感情研究のグループが臨床に関係のあるスタッフがいます。ジョン・ティーズデイルは、うつ病の改訂学習性無力感理論や抑うつ的処理活性仮説で有名な精神病理学者です。また、アンドリュー・マシューズは、不安の情報処理の理論や、感情が認知にどのようなバイアスをもたらすかという実験心理学研究で有名です。さらに、若手のティム・ダルグライシは、PTSDなどの不安障害の理論的研究で頭角をあらわしてきた研究者です。いずれもそうそうたる精神病理学の理論家です。
○住所 MRC Cognition and Brain Sciences Unit, 15 Chaucer Road, Cambridge CB2 2EF
○ ホームページ http://www.mrc-cbu.cam.ac.uk/External/index.shtml
マンチェスター大学は1851年にできた古い大学です。マンチェスターはイギリスの産業革命の発祥の地であり、科学技術のさかんな地です。マンチェスター大学の関係者でノーベル賞を受けた人は21人にのぼるそうです。この大学は臨床心理学もさかんです。
マンチェスターに行くには、ロンドンのキングスクロス駅からマンチェスター行きの鉄道にのります。3時間ほどでマンチェスター・ピカデリー駅に着きます。そこから歩いて20分ほどのところに、マンチェスター大学のキャンパスがあります。
マンチェスター大学は7つのFucultyからなっています。芸術、社会科学法学、教育学、医学・薬学、科学・工学、生物科学、ビジネススクールの7つです。この中の科学・工学のFacultyの中に、心理学科(Department of Psychology)があります。
教官は教授7名を含めて約30名のスタッフです。スタッフは、4つのグループで研究しています。
①応用社会心理学と認知、
②実験心理学と神経科学、
③言語とコミュニケーション、
④精神病理学の4グループです。
このうち精神病理学の研究グループを率いるのは、リチャード・ベンタル教授です。ベンタルは、統合失調症の研究で有名で、妄想や幻聴について多数の論文を書いています。精神病理学の研究グループには、ほかに、妄想の心理学的研究で有名なアントニー・モリソン上級講師や、統合失調症の「心の理論」の研究をしているリアノン・コーコラン講師がいます。日本人の上出由紀先生も講師をしておられます。
私は2000年にベンタル教授を訪ねて初めてマンチェスター大学に来ました。ちょうどリバプール大学から移られたばかりで、部屋の中は雑然としていましたが、ご家族の写真は部屋の真ん中に大きく飾ってあったのが印象的でした。ぜひ日本に来てくださいと言ったら、子どもが小さいので今のところはは難しいとおっしゃっていました。翌年のグラスゴウのBABCPでベンタル教授と再会することができました。
また、心理学のキャンパスの近くに、Manchester Royal Infirmaryという施設があり、ここにエイドリアン・ウェルズのオフィスがあります。ウェルズは、後述のタリア教授のもとで、臨床心理学科のリーダー(教授と上級講師の間のポスト)をしています。この人は、不安障害の若手研究者として頭角をあらわしてきた人です。オクスフォード大学でデイビッド・クラークと共同でおこなった対人恐怖の認知行動療法の研究は非常に高く評価されています(理論については、私の『エビデンス臨床心理学』を参照してください)。また、不安障害についての理論的著書を多く著してており、邦訳に『心理臨床の認知心理学』(培風館)があります。私は2000年にウェルズさんと会うことができました。その時はまだ上級講師でした。日本の対人恐怖の研究についてかなり興味を示してくれました。また、2001年には、バンクーバーの世界認知行動療法学会でこの人の臨床ワークショップを聞いて、ワークショップの有効性に目覚めました(その時の様子は『認知行動療法ワークショップ(金子書房)』にまとめてあります)。その意味では、ウェルズは私の仕事に大きな影響を与えました。その後、幸運にも私はウェルズの著書の監訳にたずさわることができ、さらに幸運なことに、私の在外研究の間にその本が出版されました。そこで、2003年の1月に邦訳本を届けにマンチェスターのウェルズを訪ね、再会を果たすことができました。
○心理学科の住所
Department of Psychology, University of Manchester, Oxford Road,Manchester.M13 9PL.
○ホームページ http://www.psy.man.ac.uk/
マンチェスター大学には、臨床心理学の博士コースも設けられています。これはニック・タリア教授のもとでおこなわれています。タリア教授は、医学・薬学のFacultyの中の精神医学行動科学校(School of Psychiatry and Behavioural Sciences)の臨床心理学科(Department of Clinical Psychology)を率いています。タリア教授のグループは、マンチェスター大学のキャンパスではなく、ウィシングトン病院(Withington Hospital)の中にオフィスを持っています。また、臨床心理学のスタッフは、現場の病院の中に分散してオフィスを持っています。大学の教官が臨床施設の中で研究・教育をおこなうというシステムをとっているわけです。これもイギリスの臨床心理学研究の大きな特徴だと思います。このようなシステムは、臨床心理学の実践と研究を統合するには最適であるように思います
ウィシングトン病院がある場所は、マンチェスター・ピカデリー駅からやや離れており、タクシーで20分ほどの所です。
タリア教授は、統合失調症の認知行動療法や家族介入の研究で世界的に著名な臨床心理学です。こうした治療介入法の効果について、RCT(Randomised controlled trial)を用いた効果研究をおこなっています。その業績はアメリカ精神医学会のDSM-Ⅳの中にも引用されているほどです。こうしたRCTの治療効果研究は、多くの人員と予算を必要とするビッグプロジェクトであり、それをオーガナイズしているのがタリア教授です。彼のもとには多くの臨床心理学者が集まってきており、マンチェスターは、統合失調症研究のセンターとして世界的にも認められるようになってきました。マンチェスター大学は、以前から統合失調症の精神病理学がさかんな地であり、「マンチェスター学派」という名称で知られています。現在、それを引き継いでいるのがタリア教授です。統合失調症についての多くの本を編集しています。
タリア教授のもとには、統合失調症の研究者が多く育っています。論文や学会では、クリスティン・バロウクロウやジリアン・ハドックなどの名前をよく目にします。この人たちは、タリア教授のもとでリーダーをつとめています。リーダーというのは、教授と上級講師の間のポストです。また、レイチェル・カラム上級講師もいます。また前述のウェルズはタリアのもとでリーダーをしていますし、前述のモリソンもタリアのもとで仕事をしていました。
このようなスタッフが、臨床心理学の博士コースを運営しています。コースディレクターはレイチェル・カラム先生です。在籍する学生は45名ということでした。
私は2000年にタリア教授を訪ねました。彼の部屋は、学者の部屋というよりは、ビジネスマンの部屋という感じで、整然として居心地がよさそうでした。した。その年に会議で日本を訪ねたということで、壁には日本の新幹線の写真とか、日本のおみやげなどが飾られていました。非常に親切に対応していただきました。新しい著書をプレゼントしてくれたり、いろいろな資料を山のようにくれたり、秘書の車でマンチェスターの街まで送ってくれたりしました。話の端々から「いつでも俺の所に来い」といった雰囲気が伺えて、親分肌のところが見えました。この人の回りに多くの有能な若手研究者が集まる理由がよく理解できました。臨床心理学者でこのような雰囲気を持っている学者はあまりみかけたことがなく、たいへん貴重な存在だと思いました。タリア教授の行き方に私は強く影響を受けています。
○臨床心理学科の住所
Department of Clinical Psychology, Withington Hospital, West Didsbury, Manchester, M20 8LR
○臨床心理学の博士コースのホームページ
http://people.man.ac.uk/~mdphwnj/home.html
バーミンガム大学は1900年にできた古い大学で、学生数は25000人という大きな大学です。マンチェスターと同じく、イギリスの産業革命がおこった場所です。
バーミンガム大学は多くの学校からなっていますが、その中に心理学校(School of Psychology)があります。教官は教授10名を含めて約50名のスタッフです。スタッフは、4つのグループで研究しています。
①応用社会心理学、
②行動神経科学、
③認知と言語、
④知覚システム
の4グループです。
このうち、①の中に、健康心理学の小グループがあり、それを率いるのはジム・オーフォード教授です。この人は摂食障害や依存の研究をしており、"Excessive Appetites: Psychological View of Addictions"という有名な本を書いています(Orford, 2000)。また、③の中に、精神病研究の小グループがあり、それを率いるのはマックス・バーチウッド教授です。バーチウッド教授については、次の項目で述べます。このグループには、ほかに、妄想の心理学的研究で有名なピーター・トラウアー講師がいます。この人は、バーチウッドとチャドウィックとの共著で、"Cognitive therapy for delusions, voices and paranoia"という影響力のある本を書きました(Chadwick, Birchwood and Trower, 1996)。
このように臨床のスタッフも多く、この学校で臨床心理学の博士コースを運営しています。コースディレクターはクリス・オリバー先生です。
上で述べたバーチウッド教授は、大学の職員なのですが、大学ではなく、早期介入サービス(Early Intervention Service)という施設の中にオフィスを持っています。ここでのプログラムは、アイリス(Initiative to Reduce the Impact of Scizophrenia:IRIS)と呼ばれます。
バーミンガムに行くには、ロンドンのキングスクロス駅からバーミンガム行きの鉄道にのります。2時間ほどでバーミンガム・ニュー・ストリート駅に着きます。そこからタクシーで10分ほどのところに、早期介入サービスの施設があります。
早期介入サービスは、統合失調症に対する早期介入のための地域施設です。慢性化した統合失調症を病院でケアすると莫大な費用がかかります。そこで、発病したばかり人に対して、保健所のような組織が、早期に治療をはじめる試みがされるようになりました。バーチウッド教授の率いるバーミンガムの早期介入センターは、早くからこうした試みをして、低コストで大きな成果をあげました。統合失調症の発病を予測し,それにもとづいて初回のエピソードがあった時にすぐに介入できる体制を整えているのです。この施設は、バーミンガムの西地区を担当します。西地区の人口は18000人で、統合失調症を発病する人は毎年100人近くいるそうです。ひとりのコミュニティ・ナースが15人のケースを担当しています。24時間365日の体制で、発病した人の家庭を訪問し、医療サービスをおこなっています。かなり画期的なシステムです。ここがモデルとなって、統合失調症の早期介入がNHS(英国健康サービス)の正式の活動として取り入れられることになり,イギリスで50カ所に早期介入施設が作られる予定ということでした。早期介入はイギリスのメンタルヘルスの最先端の仕事です。バーチウッドはその最先端の仕事をしている人です。
バーチウッド教授の研究は、こうしたコミュニティ・ケアの実践の中から生まれてきています。具体的には、幻聴や妄想に対する理論や治療のことです。バーチウッド教授の仕事については、私の『エビデンス臨床心理学』の第10章「幻覚の認知モデル」か、『認知行動療法ワークショップ(丹野編、金子書房)』の第4章の石垣さんの論文をごらんください。
私は2000年にメールのやり取りをしてバーチウッド教授と連絡をとり、2001年のグラスゴウのBABCPでバーチウッドと知り合いました。そして、2001年にはバーチウッドを東京に呼んで、ワークショップを開いてもらいました。それをまとめたのが『認知行動療法ワークショップ』という本です。幸運なことに、私の在外研究の間にその本が出版されました。そこで、私は本を届けにバーミンガムのバーチウッドを訪ねることができました。その時は、石垣琢麿さんや私の研究室の院生といっしょに訪ねました。そこで強く感じたのは、大学の教官が臨床施設の中で研究・教育をおこなうというシステムです。こうしたことは、学会で会ったりしてもわからないことであり、研究者の仕事場を訪問することの意義はここにあります。また、バーチウッド教授は、2001年に、"Schizophrenia"という解説書をPsychology Press から出しましたが、この本は、統合失調症を生物・心理・社会モデルからバランスよく解説した名著なので、石垣さんを中心として翻訳することになっています。バーチウッド教授とその打ち合わせをすることができました。
○早期介入センターIRISの住所
Early Intervention Service IRIS,
Harry Watton House, 97 Church Lane, Aston, Birmingham B65UG
○早期介入センターIRISのホームページ
http://www.iris-initiative.org.uk/index.shtml
インターネット上で、バーチャル・ツアーをすることができます。大学や施設のホームページでは、施設の写真とか、スタッフの写真を載せることも多くなりました。これを利用すれば、バーチャル空間で、イギリス臨床心理学ツアーをすることができます。
バーチャル旅行になれていると、いざ実際に出かける時にも楽になります。
大学のホームページはだいたいどれも同じ構造をしています。これを知っていれば、だいたいどの大学の心理学科についても調べることができます。一般的な方法を書いておきます。
①まず大学全体のホームページを探します。
例えば、ロンドン大学なら、 まず http://www.lon.ac.uk/colleges.htm
に行き、そこでカレッジ名をクリックします。
オクスフォード大学なら、 http://www.ox.ac.uk/
ケンブリッジ大学なら http://www.cam.ac.uk/
大学全体のホームページがわからない場合は、イギリスのyahooで検索してもよいでしょう。
http://uk.yahoo.com/
②大学全体のホームページが出てきます。
ここには、いろいろな情報(例えば、歴史や地図、交通機関の利用法)が出ています。
そのうちの、「Departments」とか「Faculties & Schools」などと書かれたところをクリックします。すると、その大学の学部一覧とか、学部・学科の一覧が出てきます。大きい大学は、学科をアルファベット順に並べて示してあります。
そこで、心理学関係の学部・学科を調べてクリックします。
ロンドン大学のユニバーシティ・カレッジであれば、A-Z Alphabetical listを見ると、Pの項にPsychologyという項目が見つかります。
オクスフォード大学やケンブリッジ大学は、Experimental Psychologyという項目が見つかります。マンチェスター大学はPsychologyという項目が見つかります。
clinical psychologyといった学科はほとんどありません。また、例えば、Continuing Education(社会人継続教育)といった機関の中に、Psychotherapyなどといった形で入っていることがあります。
③心理学科のホームページが出てきます。そこにもいろいろな情報が出ています。
同じような構成のところが多いので、慣れてくるとだいたい見当がつくようになります。
だいたい以下のような情報が載っています。
コースの名前をクリックすると、その内容や担当教官や費用などを表示していることが多いようです。いくつかを比べてみると、面白いでしょう。
④なお、臨床関係の学位のコースは、心理学科とは別の機関に設置されている大学も多いので注意が必要です。例えば、ロンドン大学キングスカレッジは、精神医学研究所に設置されています。オクスフォード大学はワーンフォード病院(ハリス・マンチェスター・カレッジ)に設置されいてます。
臨床心理学博士(Doctorate of Clinical Psychology)の設置機関の一覧は、英国心理学会のホームページに載っています。以下のアドレスをみてください。
http://www.bps.org.uk/careers/careers3.cfm#clinical
この中の、「postgraduate training course in clinical psychology (3 years)」をクリックすると一覧表が出てきます。
ロンドンの地下鉄や鉄道の駅などは、以下のホームページに出ています。
http://www.thetube.com/content/tubemap/
地下鉄(Tube)のマップで、ロンドン大学ブルームズベリ地区のあるトッテナム・コート・ロード駅や、タビストック・クリニックのあるフィンチリーロード駅を探してみてください。
また、鉄道のマップで、モーズレイ病院のあるデンマークヒル駅や、ベスレム・ロイヤル病院のあるエデンパーク駅を探してみてください。
イギリスの列車の時刻を調べる場合は、インターネットで、列車のページを開きます。
http://www.rail.co.uk/ukrail/planner/planner.htm
ここで、列車の乗車駅と降車駅を入力すると、発車時刻と到着時刻を表示してくれます。
列車の時刻表を買うこともできます。ヨーロッパならトマスクックの時刻表があります。これは日本でも売っています。私は、大学の生協で買い求めました。インターネットの検索は確かに便利ですが、旅行する場合は時刻表がないと困る場合も多いのです。
イギリスの地図を調べる場合は、インターネットで、地図の検索のページを開きます。
http://www.streetmap.co.uk/
あるいは http://uk.maps.yahoo.com/
ここで通りの名前とか、郵便番号(Postal Code)を入力すると、周辺の地図が表示されます。ズームインとズームアウトも自由にできて便利です。
また、いろいろな地図帳も売っています。London A-Zとか、Street Atlasとか、Hallwag City Mapといったものです。これらは、アルファベット順の索引で、通りの名前を調べ、そこから地図を検索できるようになっています。私は日本の書店でHallwag City Mapを買い求めました。インターネットの検索は確かに便利ですが、すぐに調べたいときなどは、地図がないと困る場合も出てきます。
イギリスの地図は道路を中心に描かれていて、日本の地図とは違う空間把握になっています。イギリスでは、どんな小さな通りでも名前がついており、地図で通りを見つけられると、そこにたどり着けるようにできています。その点では便利です。旅行者にとっても、予約してあるホテルを探したり、博物館を探したりする場合は、たいへん楽です。タクシーに乗る場合でも、通りの名前を言えばいいので楽です。ロンドンのタクシーの運転手はこうした通りの名前を隅々まで覚えていると言われています。こうした空間把握については、林望の『ホルムスヘッドの謎』(文春文庫)の「地図のかけないイギリス人」を読むと参考になります。私はこれに対する反論をもっていますが。